40
「IDOL」(2018年)


“僕らは自分たちが何者であるかをわかっているし、僕らは愛されている、だからバイバイ”という歌詞を見る限り、「IDOL」はアンチに向けられた、皮肉とは無縁の直球メッセージだ。ひょっとしたら、欧米化しすぎているという批判への対応策として、BTSのクリエイティブチーム(音楽、動画、コレオグラフィー)はインドのボリウッドやバングラ(訳注:インドのパンジャブ地方の伝統音楽)文化からヒントを得て、現代のダンススタイル(南アフリカのゴムとグワラ、レゲトンなど)と韓国の伝統的な要素(サムノルリという伝統的な打楽器、パンソリという口承文芸、ガクグングという弓の競技で使われる角笛、韓服、韓屋、そしてたくさんの虎)を融合したのかもしれない。こうして目眩く祝祭のようなファンタジアが誕生した。—C.A.

39
「Whalien 52」(2015年)


BTSのディスコグラフィーを彩る内省的な曲の多くがそうであるように、「Whalien 52」にも誠実なシンボリズムがたくさん盛りこまれている。この曲でメンバーは、「52ヘルツのクジラ」のメタファーを使って孤独との戦いを語る。52ヘルツという、ほかのクジラには聞き取ることができない高い周波数で呼びかけるこのクジラは、世界でもっとも孤独なクジラとして知られている。「Whalien 52」でBTSは、誰ともつながれないことや、スターダムとそれにともなう不安などを歌う。クジラのたとえは、BTSのイコノグラフィーにおいても重要で、直近の例として、クジラは「We are Bulletproof: the Eternal」(2020年)のアニメーションMVにも登場する。だが、MVのクジラ(BTSの象徴)は、もう孤独ではない——ARMYという仲間のおかげで強さを見出したのだから。—D.D.

38
「We are Bulletproof: the Eternal」(2020年)


「We are Bulletproof」シリーズを締めくくる「We are Bulletproof: the Eternal」は、タイトルに込められた「僕らは防弾」という壮大な約束がテーマの曲。高揚感あふれるEDMサウンドにのせて、メンバーの声は神々しい響きを帯びながら、壮大なグローバルファンダムのインスピレーションあふれる力について語る。“僕らは永遠に防弾”と、メンバーはコーラスで歌う。“僕らは楽園にたどり着いた/僕らには君がいる/僕らは7人じゃない、君も仲間”。—N.M.

37
「ON」(2020年)


バロック様式の大聖堂とスーパーボウルのハーフタイムショーを掛け合わせたような「ON」。10名の共作者、ゴスペルコーラス、「Kinetic Manifesto Film」と銘打った壮大なMV、マーチングバンドなどなど、このトラックには無数のハイライトがある。そのなかでも見逃してはいけない2点をあげよう。まずは、2回目のコーラス後にチャーチオルガンの音色だけが響き、JUNG KOOKの美しいファルセットが天に昇って天体の配置を変えてしまうところは圧巻。もうひとつは、その後にマーチングバンドのトラップビートに合わせて繰り広げられるダンス。観る人をあっと言わせる衝撃作だ。—C.A.

36
「Hold Me Tight」(2015年)


ピアノの静かな調べがR&Bのビートに取って代わると、“グラスを空けると君への想いが募る”とRMがラップする。失われていく愛をつなぎ止めるには、嘆願しながら失われたものを取り戻す淡い期待を抱きつづけるしかない。このバラードは、クレジットにVの名前が刻まれた最初のトラックであると同時に、さらに内省的で多様な側面をもつBTSの楽曲の序章でもある。—N.M.

Translated by Shoko Natori

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE