10
「DOPE」(2015年)


まるで映画のような世界観が見事な「DOPE」のMV。欧米のオーディエンスは、このMVを通じて初期のBTSを見出した。勤勉できちんとした身なりをした、クラブ通いとは無縁の若者に扮した最高にキュートで表現力に富んだBTSは、中毒性の強いPdoggの緊迫感あるサックスの音色(フロー・ライダーの「GDFR」とLookasがリミックスしたWarの「Low Rider」から影響を受けている)に合わせてAIのBボーイのように動く。「DOPE」のMVは、何回観ても最高だ。—C.A.

9
「I NEED U」(2015年)


優しくて遊び心に満ちた木管楽器のようなシンセサイザーのサウンドが繰り返されるなか、愛を歌うSUGAのラップは苛立ちから憎しみへと変わる。同時に、EDMのエネルギーの波も高まる。すると突然、“Everything/Everything”と嘆くVの声がまるで最後の言葉のように消えていく。スネアドラムのサウンドによってあらゆる世代がダブステップを踏んで踊りたくなるようなコーラスを放つ一方、JIMINとJUNG KOOKは“I need you girl”と、叙事詩のようにエモーショナルな嘆願を交わし合う。だが、「I NEED U」がこれほど強く響く理由は、この曲を機にBTSがブレイクし、BTSというサウンドを確立したから。そして韓国で大ヒットを記録し、私たちをバンタン・ユニバースに迎え入れてくれたからだ。—C.A.

8
「Blood Sweat & Tears」(2016年)


グローバルシーンでのBTSのブレイクは、きらびやかな爆弾のような「Blood Sweat & Tears」から始まった。この曲は誠実であると同時に挑発的だ。JIMIN、V、JUNG KOOKの滑らかでゴージャスなファルセットが特徴的な同曲のプロデューサーたちは、うずくようなレゲトンのビートとセクシーなシンセサイザーのサウンドにトロピカル・ハウスの爽やかな風を重ねた。シンセサイザーが繰り出すボーカルのフックは飛び跳ねるようなエネルギーにあふれていて、魅惑的なグロッケンシュピール、チャイム、流れるようなギター、ハンドクラップにはEDMを使ったチューニングなんて必要ない。おまけに、“peaches and cream”とラップするRMは、デッキチェアでくつろいでいるかのようだ。そしてJ-HOPEは、あなたをウィスキーのように飲み干そうとする。—C.A.

7
「Black Swan」(2020年)


SUGAが「DOPE」で“俺ら頭から爪先まで、超ヤベー/四六時中スキル磨いて、超ヤベー/遊んでいなくても、青春はなくても”と吐き捨てたように、2015年当時から、すでにBTSはポップスターとしての地位に付随する疎外感を表明していた。「Dionysus」では、こうした苦悩が大きくなる様子が描かれたのに対し、「Black Swan」でBTSはアーティストとしての情熱が失われることへの恐怖を歌った。物悲しいストリングスのサウンドとリズムマシンが刻むハンドクラップの奥深い音に囲まれた、オートチューンされた彼らの奇妙な叫びは、催眠薬のような高いクラウド・ラップにかき消される。同曲のMVでは、きらびやかな空白に捕らわれたかのように、テーラーメイドのブラックスーツに身を包んだ裸足の7人が身体を使ってあらゆるフォルムを描き出す。—C.A.

6
「Dimple」(2017年)


最初に耳を打つメロディがサイレンのように響きながらリスナーと戯れる。すると、“天使が犯したミスなのか? それとも深いキスの痕なのか? そのえくぼは罪”とボーカリストたちが加わる。「Dimple」のコーラスはJIMIN、V、JIN、そしてJUNG KOOKが歌っているのだから、この時点で罪(曲中ではillegalとille-girlを使った言葉遊びが展開される)なのだ。『LOVE YOURSELF 承 ‘Her‘』(2017年)のB面ともいうべきこの曲をBTS以外の誰かが歌ったとしたら、甘ったるい口説き文句の連続にしか聞こえないだろう。だが、ボーイズグループらしさを全開にすることで歌詞に決定的な魅力を添えている。思わず笑顔になってしまう曲だ。—N.M.

Translated by Shoko Natori

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