95
「Stay Gold」(2020年)


BTSの日本語曲には、リスナーを心地よいトランス状態へと誘う何かがある。ひょっとしたらそれは、愛や失恋といったテーマが想起する温かみのある甘いサウンド、あるいはほろ苦さのせいかもしれない。いずれにしても、BTSの日本語曲は、今も昔もファンが待ち望んでやまない(そして人気の)トラックだ。アルバム『MAP OF THE SOUL: 7 〜THE JOURNEY〜』(2020)の先行リリース「Stay Gold」も、アップビートでポップなアレンジにのせて楽観的な気分、温もり、ロマンスを届けてくれる。コロナ禍という不確かな時代にリリースされたこの曲は、希望の光として世界中に降り注ぎ、パンデミックの閉塞感を春先の“つらら”のように溶かしてしまった。—D.D.

94
「Crystal Snow」(2018年)


そっと開く花のように、優しげに漂うメロディーが美しい「Crystal Snow」は、前作「Spring Day」がそうであるように、季節の鮮やかなイメージを駆使して愛の移ろいやすさを表現している。“君が僕を通り過ぎ水になろうと/胸でまだ流れてる/輝くものすべてに映る/光る君を見つめてる/待ってるさ またどこでも”とRMはラップする。静かに始まる「Crystal Snow」は、“君を抱きしめたい/消えてしまう前に/もう一度”というボーカリストたちの願いにのせてミュージカル作品さながらの優美さと力強さとともに開花する。—N.M.

93
「Trivia 承: Love」(2018年)


2018年リリースのLP『LOVE YOURSELF 結 ‘Answer’』に収録されているRMのきらびやかなソロ曲「Trivia 承: Love」。この曲でRMは、韓国語で戯れながらファンの愛情に対する感謝の気持ちを綴っている。サラム(人)とサラン(愛)という発音の似た言葉で韻を踏みながら、ARMYのおかげでひとりの人間として成長できたことに感謝しているのだ。かたやフランスの哲学者デカルトの「我思う、故に我あり」という名言へのオマージュとして、“僕は生きる、だから僕は愛する”と嬉しそうに宣言する。「Trivia 承: Love」は、ARMYにしか解読できないオノマトペ、シンボリズム、サプライズ——すべてを列挙するのは不可能——に満ちている。いかにもBTSの知的なリーダーらしい贈り物だ。—R.C.

92
「Your eyes Tell」(2020年)


当初はJUNG KOOKのミックステープに収録される予定だった日本語曲「Your eyes Tell」。この曲は、ソングライターとしてのJUNG KOOKの手腕を知らしめると同時に、恋愛と失恋とその中間にあるすべてのものに対するJUNG KOOK独自の視点を私たちに示してくれる。バラード風の感動的なメロディーに秘められたメロウなボーカルパフォーマンスが鮮やかな「Your eyes Tell」には、愛情と希望の熱い告白ならではの美しさがある。—D.D.

91
「I’m Fine」(2018年)


「Save ME」(2016年)に登場するエレクトロポップ調のシンセサイザーの音色とともに始まる「I’m Fine」。唯一の違いは、「I’m Fine」のほうが虚ろに響く印象を与えること。サンプリングのサウンドが歪んで消えると、Vの美しいかすれ声が流れこむ。「助けて」と「大丈夫」がアンビグラム(訳注:見方によって複数の読みや解釈ができるようにデザインされた文字のこと)になっているように、「I’m Fine」と「Save ME」の歌詞は(構造的にもテーマ的にも)表裏一体だ。「Save ME」の2年後、BTSは誰かに頼らない強さを身につけた。彼らは、温かい眼差しで過去の自分たちを振り返る一方、新たな一歩とともに前進しつづけるだろう。—N.M.

Translated by Shoko Natori

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