5
「Silver Spoon」(2015年)


ボーカリストとラッパーというBTSのグループ構成は、上から目線の年季の入ったステレオタイプに対して中指を立てる「Silver Spoon」で見事に功を奏している。多種多様なライムを理解するにはウェブ翻訳と韓国社会に関する基礎知識が必要不可欠だが、JUNG KOOKが“バンバン”や“お前、冗談だろう!”と唱えた瞬間、エネルギー満載のトラップビートに平手打ちされたような気分になる。JUNG KOOKのこうした言葉が社会に対する反応であることは意外でも何でもない。管理職クラスは、「もっと努力しなさい」と恵まれない環境出身の子どもたちをあおり続けては、「経験」という形で支払われる消耗的な仕事で成功することを期待する。「Silver Spoon」の韓国語のタイトル「ベプセ」は、「小型の鳥類」または「ダルマエナガ」のことで、「身の程知らずは、痛い目にあう」という意味のことわざに由来する。ヒップホップであると同時にBTS世代のアンセムソングとも言うべき「Silver Spoon」は、心に強く響く。—C.A.

4
「Burning Up (FIRE)」(2016年)


“燃えてるな”というSUGAのフレーズとともに引火する「Burning Up (FIRE)」。それに続き、ハウス・ミュージックらしいスネアドラム、突き刺さるホルン、ワイルドで鋭く鳴り響くシンセサイザーのサウンドとともに魅惑的な“Fire”のグループチャントが繰り広げられる。だが、この曲のムードを決定づけているのは、J-HOPEとSUGAの大胆で嘲笑的なビースティ・ボーイズ風の精神だ(歌詞自体は、痛々しいフラストレーションを歌っている)。ラッパーたちのエネルギーは、華やかなダブステップのビートとバスドラムの重たい響きとともにエスカレートする。言語(韓国語と英語のミックス)は、「Burning Up (FIRE)」の内容を伝えるための障害にはならない。住んでいる国、経済的なバックグラウンド、抑圧された状況にかかわらず、若者たちにテンションを上げて、社会階層の制約、否定的なアンチ、自分自身を抑制するすべてに火をつけろと明白に呼びかけている。—C.A.

3
「Ddaeng」(2018年)


BTSの卓越したパフォーマンスはこれまで何度も賞賛を浴びてきたが、デビュー当時から彼らの一番の武器は言葉だった。韓国のヒップホップシーンでメンバーが頻繁に直面した批判に向けられたスタイリッシュなディストラック「Ddaeng」は、この事実を見事に証明している。2018年にグループ結成5周年を記念してSoundCloudでリリースされたこの曲は、韓国の伝統楽器の調べにのせてRM、SUGA、J-HOPEが「ddaeng」という言葉の6つの意味——主に「間違い」や「(お前は)終わった」など——を巧みに駆使している。“俺たちはダメにされてる、礼を言うぜ/いままで俺たちを無視してくれてありがとう/スタジアム、ドーム、ビルボードに感謝”とSUGAが言い放つ。痛烈であると同時に爽快な「Ddaeng」は、誰が間違っていたのかを決める最終決定権をBTSが手に入れたことを確信させる。—N.M.

2
「Save ME」(2016年)


すべての人を虜にすると同時に、すべての音楽オタクにBTSの完璧主義的なポップ・ミュージックの手腕を認めさせる「Save ME」(YouTubeであるプロデューサーは「IQ400レベルの天才的なプロダクション」と絶賛した)。JIMINの最初のヴァースだけをとっても「Save ME」は軽快で優しいドラマチックな展開をみせ、そこに息を呑むような4人の歌声が重なる。そして私たちは、ボーカリスト全員の豊かなニュアンスあふれるテクニック面での才能にただただ驚かされる。考え抜かれた風変わりなインストゥルメンテーション——チクタクというパーカッションや流れるようなマリンバのサウンド、漠然とした憧れを表現する、遠くから響くEDM調のスネア——は、下へ下へと落ちていくような感覚を生み出す。だからこそ、私たちは実際コーラスで救われる。ラッパーたちが放つ、賑やかで正確なフロウを聴けば、ミーゴス(訳注:クエイヴォ、オフセット、テイクオフの3人からなる米アトランタ出身のラップ・グループ)だって笑顔になるはず。—C.A.

Translated by Shoko Natori

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