80
「Interlude: Shadow」(2020年)


BTSのリアルバラエティ番組『Run BTS!』の2018年のあるエピソードで、SUGAは自作の詩を披露した。“多くの光に照らされるにつれて/影も増えていく”は、その一節だ。『MAP OF THE SOUL: 7』(2020年)のオープニングを飾る鮮烈な「Interlude: Shadow」でSUGAは、影というメタファーを掘り下げながら、有名人であることにつきまとう影の部分をさらに探求する。「Intro: O!RUL8,2?」のムード漂うサンプリング音とともに始まるこの曲でSUGAは、“怖いんだ/空を飛ぶのが怖くて仕方ない/ここがこんなに孤独だなんて、誰も教えてくれなかった”と感情を吐露する。だが、心の中の悪魔と戦う覚悟を決めた瞬間、テンポが変わり、パワフルなベース音が加わる。こうしてSUGAは、影の視点に立って言葉を吐き出す。その言葉は、影との共存以外の選択肢がないことを彼に自覚させる。—N.M.

79
「Look here」(2014年)


歯切れの良いソウル/ファンク風のプロダクションの下にイタチごっこのモチーフが潜む「Look here」。嫉妬と執着心が膨らむにつれて、それは徐々に危険な様相を帯びていく。ボーカリストたちは、鮮やかなファルセットにプリンス風な要素を盛りこむ。その結果、ラッパーたちの遊び心あふれるハスキーなヴァースと見事なコントラストが描かれる。—R.C.

78
「Outro: Tear」(2018年)


「Outro: Tear」は、BTSのもっとも傷つきやすい部分を垣間見ることができるトラックだ。メンバーが解散について悩んでいた時期に書かれた「Outro: Tear」(2018年のEP『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』に収録)は、この苦しい時期に7人が経験したありとあらゆる感情をとらえている。オーケストラをフィーチャーした「Outro: Tear」では、RM、SUGA、J-HOPEによってメンバー全員が経験した失望、怒り、絶望の感情が強調される。3人は、「涙」と「引き裂く」というふたつの意味を持つ「tear」という言葉を使って悲しみやグループ内の絆のほころびを表現する。そのなかでも、J-HOPEがほかのメンバーに向けた“君は僕の始まりと終わり/それはすべて/僕の出会いと僕の別れ/君は僕のすべて、恐れよ、前に行け/それは繰り返される、君のせいで/Tear”というヴァースは、とりわけ胸を打つ。—R.C.

77
「Paldogangsan」(2013年)


スキット(訳注:ヒップホップアルバムに収録される間奏曲[インタールード]のこと)であると同時に寓話的な「Paldogangsan」。別名「方言ラップ」として親しまれているこの曲では、韓国南東部・慶尚道の大邱出身のSUGA、南西部・全羅道の光州出身のJ-HOPE、首都ソウルを取り囲むエリア・京畿道出身のRMがそれぞれの出身地を代表してラップバトルを繰り広げる。RMは地方ごとの違いを受け入れることの大切さを説き、仲裁役としての力を発揮する。団結を呼びかけるメッセージは、その数年後にBTSが国連総会で行ったスピーチにも通じるものがある。彼らのメッセージは、韓国の文山邑(ムンサン)から馬羅島(マラド)を越えて、ニューヨークから世界中の人々に発信された。—N.M.

76
「Moon」(2020年)


ファンへの想いが詰まったJINのソロ曲「Moon」は、彼の人柄に引けを取らないくらい魅力的でキラキラしたトラックだ。心躍るギターポップへのオマージュが込められたこの曲でJINは、ARMYとの関係性を天体になぞらえて全力で歌う。“君にとって僕はただの月/君の心を明るくする小さな星”と彼は歌う。“僕にとって君は地球/僕には君しか見えない”。コンサートでは、BTSの“長男”であるJINは、『星の王子さま』の主人公に扮してセットの月の上に立つ。原作と違って、私たちの星の王子さまは決して独りぼっちではない。—N.M.

Translated by Shoko Natori

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