75
「Spine Breaker」(2014年)


「Spine Breaker」でBTSは、ティーンエイジャーの間でステータスの象徴として定着した海外アウトドアブランドの高価なダウンジャケットを引き合いにしながら、韓国社会の格差を浮き彫りにした。“パンパンに膨らんだダウンジャケットみたいに/お前の欲望も満たされつづける”と、この異色のヒップホップ曲でSUGAは吐き捨てる。高価なダウンジャケットは、必死に働きながら、こうしたものを子供に買い与えることで自分たちは生活に困っていないことを世間に示そうとする親たちの虚栄心から「背筋ブレイカー」と揶揄されている。“親の背中が曲がっても/冷酷なお前は求めることをやめない”(エンターテインメント性あふれるJINのダンスは、こうしたメッセージをとりわけ的確に表現している)。—N.M.

74
「21st Century Girl」(2016年)


2016年のダークなLP『WINGS』の収録曲のなかでもエネルギッシュなアンセムソング風のエレクトロポップ「21st Century Girl」。この曲のねらいは、女性たちに最高の自分でいることを奨励し、称えることだ。RMとの共作であるこの曲は、女性オーディエンスを褒めたたえると同時に同意や敬意の重要性を強調しつつ、決して妥協してはいけない、というメッセージを送る。曲のヴァースでJUNG KOOKは、“絶対に怖がらないで/誰が何を言おうと君はOK、大丈夫/君は強い/YesかNoかは君が言えばいい”と力強く言う。—R.C.

73
「Best Of Me」(2017年)


アメリカのDJ兼プロデューサーユニット、ザ・チェインスモーカーズとBTSのベテランプロデューサーPdoggのコラボレーションから生まれた「Best Of Me」。高揚感あふれるEDMアンセムソングの手本のようなこの曲は、EDMが人気を確立した2011年から2015年までの時期を一瞬で想起させる。この曲でBTSは、恋の結末を誇張した歌詞にのせてしびれるようなパフォーマンスを披露する。とりわけ、SUGAとJ-HOPEの激しいラップヴァースは秀逸だ。2017年の曲だというのに、パーティーアンセムとして現在も愛されつづけ、コンサートで頻繁に披露されては観客を沸かしている。—D.D.

72
「Like」(2013年)


BTSの初期の楽曲のなかでもとりわけ過小評価されている「Like」は、関係の終わりにつきまとう怒りと後悔の入り混じった感情を描いている。SUGAが手がけた歌詞は苦悩に満ちていて、“どうして僕は、君と一緒に過ごしたあの頃からいまだに抜け出せないんだろう/あの世界では、誰もがやめてしまったのに”と彼はラップする。高揚感あふれるポップなR&Bアレンジが強い怒りと痛みを覆い隠している。見過ごされがちなこのトラックのSlow Jam Remixでは、オリジナル版の説得力あるメッセージが90年代にインスパイアされた定番R&Bバラードへと昇華されている。—R.C.

71
「Trivia 起: Just Dance」(2018年)


J-HOPEのステージ上の圧倒的な存在感によって高揚感を高める「Trivia 起: Just Dance」は、BTSのコンサートのなかでもファンが一番楽しみにしている瞬間のひとつ。エレクトロポップなビートに導かれるこの曲は、“僕らのリズムはぴったりだから/僕らにはダンスがあったから、運命のようなビート/一緒に弾けよう、POP”と、ダンスというメタファーを使ってロマンチックな物語の始まりを描く。最後のPOPという言葉がJ-HOPEのソロミックステープ『Hope World』(2018年)の収録曲「P.O.P (Piece of Peace)」を示していることは明らかだ。『Hope World』には、みんなの人生の幸福の源になりたいというJ-HOPEの願いが込められている—D.D.

Translated by Shoko Natori

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