死刑か終身刑か 米高校銃乱射事件の犯人と対峙した生存者の「記憶」

マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件の犯人、ニコラス・クルーズ被告(Photo by Carline Jean/South Florida Sun Sentinel/AP Photo)

2018年、米フロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で銃乱射事件が起こり、生徒や教職員17人が死亡した。同事件の犯人、ニコラス・クルーズ被告は謀殺および殺人未遂17件で有罪を認めている。現地時間18日から始まった量刑審理では、仮釈放なしの終身刑か、それとも検察の求刑通り死刑かをめぐって審理が行われている。

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地元紙サウスフロリダ・サンセンティネル紙によると、当時マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校に通っていたアレックス・ドウォレットさんも、19日に証言台に立った。事件でけがを負ったドウォレットさんの兄ニコラスさんは、命を落とした17人の犠牲者の1人だった。ドウォレットさんの記憶では、最初に銃声がして、撃たれた後に首の後ろが「かっと熱くなる」のを感じたそうだ。

「その場に座りこみ、これが現実だとは考えないようにしました」とドウォレットさん。「これは嘘なんだと。とにかく考えないように、頑張ってパニックにならないようにしていました」

目の前には、14歳の同級生アレックス・シャスターさんがぐったり横たわっていたという。足元には血だまりが広がっていた。「身体の下から血が広がっているのが見えました」とドウォレットさん。「彼の身体に目をやると、痙攣しているというよりは、最後まで息をしようとしている感じでした。その瞬間、現実味が湧きました」

陪審はクリストファー・マッキーナさんの証言も耳にした。発砲が始まる前、ライフルを手にしたクルーズ被告と偶然すれ違った生徒だ。マッキーナさんによると、クルーズ被告は「ここから出ていけ。最悪の状況になる」と言われたそうだ。

裁判が始まってから最初の2日間、生徒が携帯で撮影した動画や監視カメラの映像など、事件当時の様々な動画が陪審に公開された。音声が削除された動画もあった。一部の動画は陪審にのみ公開され、今後一般に公表されることはない(報道陣は代表取材で閲覧することは可能だが、収録は不可)。

初日に行われたマイク・サッツ検事の冒頭陳述では、音声付きの動画が公開された。銃声が法廷内に響くと、遺族の1人が動画の停止を求める一幕もあった。クルーズ被告の弁護人も意義を唱え、動画が陪審に偏見を与えるとして無効審理を請求した。判事はこの請求を却下した。

弁護側はその他の動画でも偏見を理由に異議を唱えたが、ジェフ・マーカス検事は、州の死刑裁判で殺人が「悪意に満ち、極悪かつ残忍だった」ことを証明するためには動画が必要だと主張し、認められた。死刑裁判の際、検察は殺人に少なくとも1つの「加重要素」があったことを証明しなくてはならない。サッツ検事は冒頭陳述で、事件が「とくに悪意に満ち、極悪かつ残忍」で「冷酷かつ計算され、計画されていた」など、7つの要素を列挙した。

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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