アジカン後藤正文のフジロック談義 音楽仲間と語り合うフェスの見どころ

後藤正文、フジロック(Photo by 宇宙大使☆スター)

後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)がホストを務めるポッドキャスト番組『APPLE VINEGAR -Music+Talk-』が、今年3月よりSpotifyで配信スタート。つやちゃん、矢島由佳子、小熊俊哉(Rolling Stone Japan編集)というレギュラー陣に、ときにはゲストも交えながら、ユニークな視点で音楽トピックや楽曲を紹介している。今回は同番組との連動企画で、2大洋楽フェスをテーマに音楽談義。両フェスにまつわる思い出や、今年の注目すべき出演アーティストなどについて4人で語り合った。こちらはフジロック編。



後藤:今年の春はいろんなところでフェスが開催されましたね。僕はアジカンでARABAKI ROCK FEST.やJAPAN JAMといったロックフェスに出演して、いろいろな制限のもとでの開催ではあったけど、お客さんのマナーもいいし、よかったです。タフな時代だけど、こういう観客/リスナーがいるおかげで俺たちは音楽をできているんだ、と思った。僕たちミュージシャンにとっては、ありがたい気持ちにならざるをえない春だったんじゃないかな。

さて、今回はフジロックについてトークしていきましょう。今年のヘッドライナーはヴァンパイア・ウィークエンドジャック・ホワイト、ホールジー。去年は邦楽勢のみでしたが、今年は海外のミュージシャンが戻ってきて、フジロックらしいラインナップになりました。僕は豊洲で開催された1998年の2回目から行っているんですよ。むちゃくちゃ暑くて、会場内の水が売り切れたんです。途中から飲み物がビールしかなくなったという(笑)。で、THEE MICHELLE GUNELEPHANTのライブでは、人がわーっと前に行っちゃって中断したり。あれは伝説のライブでしたね。僕はTMGEやイアン・ブラウンを観たくて行きました。あとベン・フォールズ・ファイヴとかも出てたな。

翌年からは会場が苗場になって、その年も行ったんですけど、何もわかんないしTシャツに短パンだけという格好で来ちゃって、夜になるとめちゃくちゃ寒かった。しょうがないから物販でフジロックのTシャツを買って重ね着したんだけど、半袖の上に半袖だし、まったく防寒にならなくて逃げるように帰りました。なので、トリのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを観れなかったという(笑)。



つやちゃん:自分が印象深いのは2018年、あの年はラップ勢が多かったんですよね。ケンドリック・ラマーが5年ぶりに出演し、ヘッドライナーを務めて。あとはポスト・マローンとかN.E.R.D.も出ていました。

後藤:ポスト・マローンがスニーカーでビールを飲んだりね。

つやちゃん:そうそう。ポップミュージックにおけるラップやヒップホップの波がフジロックにも来ているんだな、と思ったのを覚えています。自分のなかで、フジはリピーターの割合が多いイメージでしたけど、この年はフジに初めて行くという人も多くて、客層が少し変わったような印象も受けました。

矢島:フジロックでの体験って、そのときの天気と一緒に記憶に残ったりしますよね。2019年に豪雨のなかでシーアを観たのを鮮明に覚えています。環境としてはめちゃくちゃ過酷なのに、ライブがとてもよくて、すごく感動的な体験でした。

後藤:ライブの内容とは別のところで覚えているというのは、ありますね。それでいうと、僕は(2010年に)アトムス・フォー・ピースのトム・ヨークが立川談志みたいな格好をしていたのが忘れられない(笑)。タンクトップに変なバンダナ、という姿で出てきて。

小熊:僕はそのとき、苗場食堂に出ていたGELLERSを観てました。トクマルシューゴさんと幼馴染によるバンドなんですけど、彼らがここぞとばかりレディオヘッドの「Creep」をカバーして(笑)。同じ時間にフジロックにいても、それぞれ違う思い出ができるというのもこのフェスの魅力かなと。

後藤:そうなんだよね。だから出演するアーティストも素敵だけれど、それと同じくらい場を楽しむフェスになっていますよね。ナイン・インチ・ネイルズと雷とか(2013年)、景色として強烈に記憶に残っている。だからこそ、誰が出ようがこの場所を愛してほしいみたいな空気が常にあるし、行く人もそういうところを楽しんでいる。フジロックは特別だと思っている人は多いでしょうね。

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