DJプレミアが語る、どれだけ時代が変わってもヒップホップが愛され続ける理由

DJプレミア(Photo by Krusou)

DJプレミアは、自らを「サウンドとボリュームに取り憑かれた」人間であると語る。その言葉どおり、米ニューヨークを拠点とするメディア会社・Mass Appealがヒップホップ誕生50周年を記念してリリースした『Hip Hop 50: The Soundtrack』のシリーズ第1弾EPには、サウンドとボリュームに対する彼の強い愛着が表れている。

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他アーティストへの楽曲提供(どれもヒット曲揃い)を行なってきたDJプレミアにとって、『Hip Hop 50: The Soundtrack』プロジェクトは大きなターニングポイントだ。というのも、DJキャレド的なこのプロジェクトは、DJプレミアが自らの名前の下で行っているのだ。ヒップホップの歴史にDJプレミアの名を刻むことができる人物がいるとしたら、本人以上の適任はいない。



ほかのプロデューサーたちが手がけた作品を見渡しても、DJプレミア以上にヒップホップの基本的な構造を体現しているものは存在しない。彼のスクラッチには、レコードを回転させた時の音以上の意味があるのだ。それはDJプレミアのトレードマークであり、ヒップホップの誕生地と言われるニューヨークのセジウィック・アベニューにふさわしく、華麗で豊かで、驚くほどの独創性を含んでいる。ウータン・クランのRZAを除いて、彼がアメリカ東海岸を代表するヒップホッププロデューサーであることに異論はないだろう。それだけでなく、DJプレミアはギャング・スターのメンバーとして活動するかたわら、ディアンジェロの『Voodoo』(2000年)に収録されているシングル「Devil’s Pie」をはじめ、ノトーリアス・B.I.G.やナズ、ジェイ・Zといったアーティストたちのプロデュースを手がけ、次々とヒットを世に送り出してきた。

長年にわたってさまざまなジャンルのアーティストたちと幅広くコラボレーションを行ってきたにもかかわらず、DJプレミアの功績は過小評価されている。アルバム『Back to Basic』(2006年)でクリスティーナ・アギレラとタッグを組んだ際、リアルで人間味があるというよりは、機械的で作り込まれた印象とともにアルバムにインパクトあふれるソウルを与えたのは、ほかでもないDJプレミア本人だ。『Back to Basic』は、真に迫る“フェイク”だった。作り物でありながらもソウルフルな同作にDJプレミアが関わっていたという事実は、気軽に音楽を楽しみたいリスナーの意表を突いた。それから時は流れ、DJプレミアは現在もヒップホップの第一線で活躍している。本誌のインタビューに応じた彼は、新作EPからヒップホップに関するありとあらゆる話題について語ってくれた。インタビュー中は時おり満面の笑みを浮かべ、ニューヨーク・ヤンキースのスター選手として活躍したデレク・ジーターのイベントでDJを務めるギリギリの時間まで率直な意見を言ったり、筆者に音楽を聴かせてくれたりした。

Translated by Shoko Natori

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