吉田拓郎の前例のない音楽人生、レコード会社社長から“いちアーティスト”に戻った30代



1978年11月発売のアルバム『ローリング30』から「ローリング30」。マニフェスト、アジテーションと言ってしまっていいでしょうね。「Rolling 30 動けない花になるな」「やさしさなどとお笑いぐささ」。作詞が松本隆さんですね。松本さんと拓郎さんが初めてがっぷり組んだ2枚組。『ローリング30』というのは、アメリカにそういう言葉がありました。アメリカの禁酒法時代、ギャングがまかり通っていた時代ですね。

このアルバムで使われている「30」というのは、30代ですね、俺たちは30代をどう生きるか。そういう言葉が、ここに凝縮されておりました。松本さんが29歳、拓郎さんが33歳です。「振り向いた昨日」と「仰ぎ見る明日」。昨日と明日に恥じないように生きようぜ。こういう歌に男たちが拳を上げたわけですね(笑)。松本さんもやっぱり拓郎さんだから、なかなか他の歌い手には書けない自分の気持ちを拓郎さんに託した。そういう詞でもあったんだと思います。30という年代をどう生きるかを考えなければいけない、そんな時代でした。

1979年7月26日から7月27日、愛知県の篠島で史上初のオールナイトイベントがあったんですね。そのオープニングのBGMもこの曲でした。箱根のスタジオに松本さんと拓郎さんが合宿して、その場で曲と詞を書いていった、2人にとっての唯一の書き下ろし2枚組です。その中から2曲を聞きいただきます。





1978年11月発売のミニアルバム『ローリング30』から「冷たい雨が降っている」と「外は白い雪の夜」。「外は白い雪の夜」を入れようか入れまいか最後まで悩んだんですね。「たえこMY LOVE」というシングルにしようか悩みながら、やっぱり入れない訳にいかないかなと思ってこれにしました。代表曲。アルバムからシングルカットがなかったんですよ。2枚組ですからいろんなタイプの曲が入ってて、結局シングルを切りきれなかったんでしょうね。でももし「外は白い雪の夜」をシングルカットしていたら、この曲はもっとヒットしただろうなとか、アルバムは違う受け止められ方をしたかもしれないなと思ったりもしました。

でも、この曲一つ引っかかってるところがあって。「女はいつでも ふた通りさ 男を縛る強い女と 男にすがる弱虫と」。そんなに簡単に二つに分けていいのって気分になったりするんですが、でもこれはやっぱり歌ですから。そうやって分けた方がドラマが作りやすいということだった。そういうふうに思っております。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE