KREVA主催「908 FESTIVAL 2022」、三浦大知や久保田利伸らと万感のフィナーレ

そんな歌謡番組風の流れの中で、華々しく響き渡るのは久保田利伸 meets KREVA名義による「M☆A☆G☆I☆C」。2人が歌い出す瞬間にロゴ入りのカラーテープが放たれ、軽やかなステップを踏みながらソウルフルな歌唱力を刻みつける久保田利伸である。ここでKREVAは、力強いR&Bのみならずしっとりとしたバラードも久保田利伸の持ち味であることを力説し、往年のシングル曲“Cymbals”をリクエストする。作曲は、KREBandの柿崎洋一郎によるものだ。味わい深い節回しで歌い上げ、ミラーボールの反射する光が武道館の天井に映り込むさまは、さながら瞬く星々のよう。歌詞と視界が折り重なって、何ともロマンチックな一幕である。

そして久保田利伸による「KREVA!! It’s Showtime!!」と景気のよい呼び込みを経て、ド派手な渦模様の柄(デザイナー氏によると、混沌とした時代を表す渦の中に形作られたハートマークは、愛に満ちた新章の幕開けを表しているという)のセットアップに身を包んだKREVAが、「基準」のソリッドかつ猛烈なラップを手始めにフェスの一夜を最高潮へと持ち込んでいった。「パーティーはIZUKO?」でのオーディエンスは、レスポンスの声の代わりに一面のハンドサインで《ここだ!》と応えていた。そして「人生」や「居場所」が、コロナ禍の苦難にもさらされてきた「908 FES」を明るく照らし出すように響く。



ここで、三浦大知名義のコラボ曲「Your Love feat. KREVA」のイントロが聴こえてくるのだが、当の三浦大知をマネージャーに扮した藤井隆が次の仕事現場に連れて行こうとする寸劇がスタート。後藤輝基や椿鬼奴も姿を見せて話をややこしくしているところに、「Your Love」を歌い出した久保田利伸の声がすべてを掻っ攫ってゆく。笑いとサプライズの喜びに満ちたこの展開は、かつて「908 FESTIVAL 2014」で三浦大知が久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」を熱唱したときを彷彿とさせていた。ベンチに腰掛けて久保田利伸の歌声に聞き惚れていたKREVAと三浦大知も最後には参加し、豪華3人コラボの「Your Love」が完成である。偉大な才能とともに築き上げてきた「908 FES」の歴史に基づいて、KREVA自身が手掛けたドラマティックな演出が見事だ。

バンドメンバーのソロリレーを含む「スタート 〜2019 ver.〜」や、楽曲そのものが生き物のように成長し続けるソロデビュー曲「音色 〜2019 ver.〜」でライブ本編を締めくくると、アンコールに応えて再登場したKREVAは会場に集まってくれた観衆へ「いろんなことがある中で、よくぞこのフェスを選んでくれました」と感謝の念を伝える。コロナ禍の苦難を振り返りながら「Finally」の猛烈なラップを飛ばし、客電全灯で「908 FES」に居合わせたすべての人々に思いを投げかけるような「LOOP END / LOOP START」で万感のフィナーレへ。最後にはあらためて出演者全員が揃い踏みとなり、大きな拍手に包まれてお辞儀する。音楽は、ミュージシャンだけのものではない。それぞれの毎日を生きる人々が集う「場」としての音楽が、「908 FESTIVAL 2022」を満たしていた。



<イベント情報>

『908 FESTIVAL 2022』
2022年9月23日(金・祝)日本武道館

セットリスト
KREVA
1. クラフト
2. 王者の休日〜2019 ver.〜
3. Fall in Love Again feat. 三浦大知

三浦大知
4. Blizzard
5. Touch me
6. About You
7. 飛行船
8. 燦燦
9. イッサイガッサイ

藤井隆、椿鬼奴、後藤輝基(フットボールアワー) from SLENDERIE RECORD
10. くればいいのに feat. 藤井隆、椿鬼奴、後藤輝基(フットボールアワー) from SLENDERIE RECORD
11. Love’s Moment
12. ハートのIgnition
13. ヘッドフォン・ガール - 翼が無くても-
14. ナンダカンダ

久保田利伸
15. M☆A☆G☆I☆C 久保田利伸 meets KREVA
16. Cymbals

KREVA
17. 基準〜2019 ver.〜
18. パーティはIZUKO?
19. 人生
20. 居場所
21. Your Love feat. KREVA、久保田利伸/三浦大知
22. スタート〜2019 ver.〜
23. 音色〜2019 ver.〜
アンコール
EN1. Finally
EN2. LOOP END / LOOP START

Rolling Stone Japan 編集部

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