Alex G 孤高のソングライターが語る人生と宗教観、曲作りのミステリー

「Miracles」を含む『God Save the Animals』収録曲のレコーディングで使用された、フィラデルフィアのHeadroom Studiosにて(Photo by Sacha Lecca for Rolling Stone)

 
インディーロック愛好家からフランク・オーシャンまで、幅広い層から支持される孤高のソングライター。アレックス・G(Alex G)が通算9枚目の最新アルバム『God Save the Animals』について語る。

昨年、アレックス・ジアンナスコーリは変化を欲していた。アレックス・Gの名で知られる謎めいたシンガーソングライターは、長年フィラデルフィア周辺でノマド生活を続けていたが、ようやく腰を落ち着ける場所を求めるようになり、長年交際を続けているバイオリニストのモリー・ガーマーと共に家を購入した。「古い一軒家で、何カ月かかけて壁紙を貼り替えたり、屋根を補修したりしたんだ」。現在29歳のジアンナスコーリはそう話す。「今はかなりいい感じだよ」

ティーンエイジャーだった10年以上前にBandcampで初のデモ音源をリリースして以来、アレックス・Gはリリースを重ねるごとにファンベースを拡大し、ツアーの規模も並行して大きくなっていった。同世代でもあるフランク・オーシャンは彼のファンであることを公言しており、2016年発表の『Blonde』とそれに伴うコンサートに彼をゲストとして招いている。どこか不可解でありながら聴き手の感情を揺さぶる歌詞、誠実さが滲み出た楽曲、露出が少なく謎めいた存在という点はオーシャンと共通しており、ファンの間ではカルトヒーローとして崇められている。

最新作となる『God Save the Animals』では、人生や宗教、アートといった大きなテーマと正面から向き合いながらも、その素顔は巧みにぼかされている。記憶に残るコーラスとダイナミックなバイブスが魅力の本作への反響は大きく、ニューヨークのWebster Hallで行われる一連のヘッドラインショーは既に全公演が完売している。ごく一部の例外はあるものの、テンプル大学の3年生だった2014年に発表された出世作『DSU』で彼が確立したフォーミュラは本作でも健在だ。曲は全て1人で書き上げ、ディティールに徹底的にこだわりながら全パートを自身で演奏し、感情を正確に表現するために歌詞を繰り返し修正する。必要だと感じた場合には、バンドのメンバーを招集してドラムやベース、あるいはギターを弾いてもらう。

「明確な起点なんてないんだ」とジアンナスコーリは話す。「好きなようにやってきて、気づいたら今の場所にいた。そういう感じ」。自分を偽ることなく成功を収めたことについて、彼は少し考えた上でこう語った。「ジンクスは好きじゃないんだ」




『God Save the Animals』では、Sam Acchione(リードギター)、John Heywood(ベース)、 Tom Kelly(ドラム)という3人の友人が4曲に参加しているほか、モリー・ガーマーが数曲のストリングスパートのアレンジと演奏を担当している。それ以外、つまりアルバムの大半はアレックスが独力で手がけている。だがライナーノーツを読まない限り、そういった違いには気づかないだろう。例えば、トム・ペティを思わせるエモーショナルなロック「Runner」では、ドラムとアコースティック&エレキギター、ベース、ピアノ、シンセサイザーの全パートを彼が担当している。その一方で、ニューメタル/ウィスパーロック/室内楽を融合させたかのような不思議な魅力のある「Blessing」は、いかにも彼ががらんどうの部屋で真夜中に1人で書き上げたように思えるが、実際にはバンドのメンバーが全面的に参加している。

「僕はそれなりにギターを弾けるけど、Samは完全に別格だからね」。軽いタッチのバラード「Early Morning Waiting」について尋ねたところ、彼はそう語った。「彼に曲のデータを送って『ギターを被せてくれ』って頼んだところ、見事に料理してくれたんだよ」。彼にとって、それはごく当たり前のことのようだ。メロディであれ歌詞であれ、彼の使い慣れたテクニックやアプローチは少しも錆び付いてはいない。「僕は決して優れた詩人というわけじゃない」と彼は話す。「何を口にすべきかを心得てるだけだよ。それは実話かもしれないし空想かもしれないし、あるいは何の意味もないかもしれない」

名声というものに、彼は常に若干の居心地の悪さを感じている。彼は時々、目の前の数千人のオーディエンスがどこの誰なのだろうかと考えてしまう。「会場の規模が大きくなるにつれて、『何これ?』みたいな反応の客も増える」と彼は話す。「簡単に説明できるようなことじゃないんだろうね。いずれにせよ、今の状況には感謝してるよ」

Translated by Masaaki Yoshida

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