フー・ファイターズの歴史を深掘り、名曲の数々から辿るバンドの軌跡

フー・ファイターズ

 
フー・ファイターズのキャリア集大成となる決定盤『The Essential Foo Fighters』が10月28日にリリースされた。1995年のデビューから現在まで、27年のキャリアを振り返るように代表曲の数々を収録(CD盤は全19曲、LP・配信は全21曲)。ファンにとってはマスト・アイテム、フーファイ初心者にとっては入門編に相応しい作品となった。そんな本作のリリースを記念して、日本盤ライナーノーツを執筆した音楽ライター・鈴木喜之による楽曲紹介コラムをお届けする。

10月28日、フー・ファイターズの『The Essential』というアルバムがリリースされた。これまでにも多くのアーティストが、同じタイトルのアルバムを出していることからも分かる通り、レーベル主導の規格もの商品と思われるかもしれないが、単なるヒット曲の寄せ集めとは片付けてはしまえないような、絶妙なこだわりも感じられる。本稿では、アルバムからの1stシングル「This Is A Call」、「Monkey Wrench」「Learn To Fly」「All My Life」「Best of You」「The Pretender」「Rope」、ライブでも定番となっている代表曲「My Hero」をあえて外した収録曲の解説を通じて、そのあたりを浮かび上がらせていってみたい。




「Everlong」

1997年の2ndアルバム『The Colour and the Shape』からの2ndシングル。初出時には、「あ、デイヴ・グロールって、ちゃんといい曲が書けるソングライターなんだな」という印象を深めたものの、当初はアッパーなハード・ロックのイメージが前面に出ていたので、そこまでの代表曲ではなかったというイメージがある。それが、いつの間にか、こうして決定版セレクションの冒頭を飾るほどの存在感を示すようになった。そのきっかけは、1998年にハワード・スターンのラジオ番組にデイヴがゲスト出演した際、この曲の弾き語りをハワードからリクエストされたこと。その時までデイヴは、「Everlong」をアコースティック・ギターで弾き語りしようと考えたことはなかったそうだ。しかし、これがあらためて、曲の良さを浮かび上がらせるバージョンとなり、2009年に出たベスト盤『グレイテスト・ヒッツ』ではボーナス・トラックとして収録。それが今回の『The Essential』でも締めくくりに配置され、この曲の人気の高さと重要性をあらためて示している。





「Making A Fire」

現時点での最新アルバム『Medicine at Midnight』(2021年)の冒頭を飾るナンバー(シングルとしては4番目)。ザ・バード・アンド・ザ・ビーのイナラ・ジョージ、サマンサ・シドリー、バーバラ・グラスカ、ローラ・メイス、そしてヴァイオレット・グロールによる重厚な女性コーラスをフィーチャーし、ここにきてフー・ファイターズがさらに音楽的な深化に取り組んでいることを証明してみせる。『Medicine at Midnight』制作時に、デイヴは「デイヴィッド・ボウイの『Let’s Dance』を意識した」と話しており、実際にそこでドラムを叩いていたオマー・ハキムもパーカッションで参加しているが、「Making A Fire」で歌われる“This is the last time”というフレーズは、『Let’s Dance』と同時期にボウイがクイーンと共作した「Under Pressure」(フー・ファイターズのライブでも、テイラー・ホーキンスのリード・ボーカルで、たびたびカバー演奏されていた)の歌詞“This is our last dance”を思い起こさせる。




「Times Like These」

ひたすらテンション高く突っ走るだけでなく、パワフルなエナジーはそのままに、ちょっと落ち着いたトーンで、人々の心にやさしく寄り添う、いわゆる「グッとくる佳曲」が何気に多いことも彼らの大きな魅力。これはその中でも筆頭に上がる代表的なナンバーと言っていいだろう。2002年のリリース当時、同時多発テロ事件に心を痛めた人が、「Times Like These」を聴いて癒されたという話も聞いたことがある。ただ実際には、メンバー間の関係性が最も悪化していた頃、バンドの将来に不安を抱えながら書いた曲だという。だからこそ、逆に特殊な力を放っているのかもしれない。


 
 
 
 

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