アヴリル・ラヴィーン来日公演 彼女が今改めてポップ・パンクを鳴らすことの意味

11月10日・東京ガーデンシアター(Photo by Kazumichi Kokei)

デビュー20周年を迎えたアヴリル・ラヴィーン(Avril Lavigne)の8年ぶりとなる日本ツアーが、11月14日の大阪公演で最終日を迎えた。ここでは音楽編集者・ライターの矢島由佳子による、11月10日の東京ガーデンシアター公演のレポートをお届けする。

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「こうやってツアーをやって、スタジオに入って新しいアルバムを作って、人生で今一番音楽が好き!」。11月10日、ジャパン・ツアーのど真ん中で、アヴリル・ラヴィーンはそう言い放った。

11月7日より横浜・東京・名古屋・大阪にて(計4会場5公演)開催された、『Avril Lavigne Love Sux TOUR 2022 JAPAN』。本来2020年5月に開催予定であったが、パンデミックの影響で2度の延期を経て、今回ようやく実施に至った。アヴリルが日本でどれほど愛されているかは、洋楽アーティスト唯一の「デビュー以来3枚連続ミリオン達成」という記録が物語っているが、日本で公演を行うのはなんと8年ぶり。日本のファンにとってはまさに待望の来日ツアーとなった。

会場について周りを見渡すと、アヴリルと一緒に歳を重ねた世代からティーンエイジャーまで、幅広い層の人たちがグッズのTシャツを身に纏いながら赤色のライトスティックを持って熱狂している。その光景が、今アヴリルがどのように愛されているのかを象徴していた。


Photo by Kazumichi Kokei


Photo by Kazumichi Kokei

20年前にリリースされた1stアルバム『Let Go』は、当時の80年代ポップ・パンク・リバイバルの一端を担った作品でありながら、同世代の女の子たちを「ファッションもマインドも自由でいいんだよ」と導いてくれるものだった。「Sk8er Boi」ではスケートカルチャーのファッションを全身に纏いながら、「バレエをやっている女の子が周りの評判を気にしてふった男の子は、5年後ロックスターになって、今この格好をしている私が隣にいる」と歌い、「Complicated」では「I see the way you’re acting like you’re somebody else gets me frustrated(君が他の誰かを演じているような姿を見るとイライラする)、「I like you the way you are(そのままのあなたが好き)」と、今では日本でもよく言われる「自分らしく生きよう」といったメッセージをいち早く音楽・映像・ファッションで体現した。

アヴリルのデビューとは、女の子が言えないことや、やったら汚らわしいと思われるのではないかと社会に思い込ませられていることなど、あらゆる固定観念をたくましく、そしてキュートに、ぶっ壊してくれる存在の登場だった。『Let Go』は21世紀に最も売れたアルバムランキングで上位20位にランクインしているという数字からもわかる通り、彼女の影響力は凄まじく、世界中の女の子たちに与えた解放感はとても大きなものであった。そのことは当時中学生だった私も実体験から証言できる。ジャパン・ツアーでは3曲目に「Complicated」が演奏されたのだが、イントロが鳴った瞬間の拍手の大きさも、この楽曲がどれほど多くの人生のそばにあったのかを証明していた。

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