クイアを主人公にした青春ドラマが人気、出演者が抱える「苦悩」

キット・コナー(DAVE BENETT/GETTY IMAGES)

クイアを主人公にした青春の恋と成長を描くNetflixドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』。同ドラマが公開されると感動的なストーリーと忠実な脚本に胸を打たれた大勢のファンがインターネットに溢れた。世界中のオーディエンスの心をつかみ――クイアの青春ドラマの可能性を押し広げたのは、主人公を演じた18歳のキット・コナー(ニック・ネルソン役)と17歳のジョー・ロック(チャーリー・スプリング役)の存在だった。そして本作のヒットは、同性愛についての理解が深まった現代において新たな問題も浮かび上がらせた。

GQ誌の巻頭特集で、コナーとロックはドラマの成功に圧倒され、これほど重要な番組の顔として、とてつもないプレッシャーを感じていると語った。世界中が2人に注目していることについて、コナーは「まるで車の免許を取ったばかりなのに、いきなり逃走車の運転手を任されたみたいだ。こうしてほしいと周りから期待されているけれど、自分にそんな器があるとは思えないという感じだ」。クイアをポジティヴに描いていることと多様なキャストを起用したことで、『HEARTSTOPPER ハートストッパー』はファンだけでなく脚本家からも高く評価された。その人気はうなぎのぼりで、出演者はお茶の間の人気者となった。だがコナーが最新ラブコメディ――ストレートの役どころ――に起用されると、そうした声援は途端に影を潜め、数百人のファンが若い俳優を「なんちゃってクイア」と非難した。何が問題かというと、コナーがバイセクシャルだということだ――本人いわく、反発をうけてカミングアウトせざるを得なかったという。どうしてこんな事態になったのか?

【動画を見る】『HEARTSTOPPER ハートストッパー』予告編

インターネットに精通している人なら、「パラソーシャル関係」という言葉を最近よく目にしているのではないだろうか。周知のとおり、インターネットはセレブリティに対する世間の見方を変えた。有名人は手の届かない高嶺の花ではなく、一般人と同じレベルに引き下げられた。だが今ではソーシャルメディアのおかげで有名人が一層身近な存在になったがために、世間は彼らとつながりがあるかのように錯覚し始め、スクリーン越しでしか会ったことのない人々に貸しがあるかのような気になっている。コナーは可能な限りソーシャルメディアとは距離を置いていたことで有名だ。だがそれでも、なんちゃってクイアだと責めるこの数カ月のコメントはいやがおうにも目に入ったようだ。

Translated by Akiko Kato

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