tricotが語る、海外ツアーの成果とアルバム『不出来』の充実度

tricot

前作からおよそ1年、4人組ロックバンドtricotがメジャー移籍後4枚目のニューアルバムをリリースした。タイトルは、その名も『不出来』。もちろんこれは、前作『上出来』を受けて付けられたものだが、一見マイナスなイメージにも取られかねないワードを敢えて用いたのは一体なぜだろう。tricotにとって「上出来」「不出来」とはいったいどういうことなのだろうか。

今年9月には、延期になっていたイギリス〜ヨーロッパツアーを無事に終え、一回りも二回りも逞しくなったtricot。今回はツアーの手応えや、ニューアルバムの制作エピソードなどメンバー全員にじっくりと語ってもらった。

─前回のインタビューでは、イギリス〜ヨーロッパツアーへの意気込みについてもお聞きしました。9月12日のイギリス シェフィールドを皮切りに、10カ国20カ所を無事に回りきった手応えから聞かせてもらえますか?

中嶋イッキュウ:海外ツアーは約4年ぶりで、今回初めて行くところもあったのですが、どのくらい人が集まってくれるのか全く分からなくて。そもそも本当に行けるかどうかも当日まで分からない状況ですし、行ってからも無事に帰って来られるかも心配だったんですけど(笑)。蓋を開けてみたら、今までで一番上手くいったんじゃないか、というくらい良いツアーになりました。


中嶋イッキュウ

─おお、そうだったのですね。

中嶋:ただ、30日間で20本ライブをこなすというハードスケジュールだったので、私は途中で体調を崩してしまい、ツアーの半分くらいは体調との戦いになってしまいました。コロナ禍でライブもだいぶ減っていたし、自分自身の体力の衰えを突きつけられましたね。

─特に印象に残っていることはありますか?

中嶋:思い返せばたくさんあるんですけど、パリでライブをした時に私の機材が壊れてしまって。現地のPAエンジニアさんがとてもいい人で、「僕が同じ機材を持ってくるから取ってくるよ」と言って、往復1時間かけて取りに行ってくれたのがすごく嬉しくて記憶に残っています。全体的に、みなさんとても協力的でやりやすかったですね。

ヒロミ・ヒロヒロ:ツアーの最後に行ったスペインのバルセロナも今回初めてで、しかも『AMFest』という割とヘヴィなバンドがたくさん出演するフェスに参加する形だったため、お客さんの反応とかどんな感じなんやろ? と少し不安だったのですが、本当にたくさんの人が見にきてくれて。ライブが終わってからも、アンコールがずっと鳴り止まんくらい盛り上がってくれていたのが信じられなかったし嬉しかったです。


ヒロミ・ヒロヒロ

─お客さんの反応も、国によってやっぱり違いましたか?

ヒロミ:違いましたね。最初は「どんなもんやろ?」みたいな感じで様子見している方が多いところもあれば、始まった瞬間からワーッと盛り上がってくれたところもあったし。本当に国によって差があるんやなと思いました。

キダ モティフォ:今回、アンコールで「potage」を演奏していたときとか、日本語の歌詞を一緒に歌ってくれているお客さんがすごく多くて嬉しかったです。今までも、例えばアジアツアーなどでは歌ってくれる人は多かったし、ヨーロッパツアーでも1フレーズだけ一緒に歌ってくれることはあったんですけど、今回みたいに例えばサビを全部歌ってくれている様子を見るのは初めてで。


キダ モティフォ

中嶋:ギターフレーズを一緒に歌ってくれている人も多かったよね(笑)。

吉田雄介:初めて行った場所で、初めてのお客さんの前で演奏するのももちろん楽しいのですが、例えば今回だったらマンチェスターやパリのように何度か訪れたことのある都市ではソールドアウトに近い売れ行きだったりして。今まで地道に回数を重ねてきた甲斐があったなと思いましたね。特にマンチェスターの人たちに対しては、硬い絆のようなものを感じました。友達を連れて複数の会場に見にきてくれた子もいたし、「日本が好きだからtricotのことも好き」というよりは、「tricotが好きで日本に興味を持った」という子が多い気がしました。


吉田雄介

中嶋:日本語を勉強している人がめっちゃ多かったし、「日本へ行ってtricotのスタッフになりたい」と言ってくれた大学生くらいの男の子もいたんですよ。

─それはすごい。コロナに対する認識も、やはり日本とは違いましたか?

中嶋:全然違いましたね。海外ツアーの少し前に国内ツアーをした頃は、まだキャパの制限もありましたし、マスク着用はもちろん「声出し」もNGでしたが、海外ツアーで訪れた場所ではそういう制限が全くなくて。フロアもパンパンだし声出しも自由でしたね。

ライブ終了後は、お客さんとも直に話すことができたので、もうコロナ以前の世界に戻ったような気持ちになりました。マスクをしている人も、中にはちらほら見かけた会場もありましたが、ほとんどの国では(マスク姿の人を)ほとんど見なかったです。

吉田:おそらく、日本からやってくる僕らに配慮する意味で、ライブハウスのスタッフさんはマスク着用でいてくださいましたけど。そういう状況の中、メンバーもスタッフも一度も陽性反応が出ることなく無事に帰国できたのは本当に良かったと思います。

中嶋:最近は日本でも少しずつ制限が緩くなってきていて。海外のような状況になっていけたらいいですよね。



RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE