柄本佑が語る、こだわりが凝縮された監督作品『ippo』の制作秘話 

Coffee & Cigarettes 41 | 柄本佑 (Photo by Mitsuru Nishimura)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。映画、ドラマと多岐にわたり活躍している柄本佑が監督した映画『ippo』が公開される。2017年から2022年の間に撮った『ムーンライト下落合』『約束』『フランスにいる』をまとめた短編集。小学校の卒業文集に将来の夢「映画監督」と書いたという柄本のこだわりが凝縮された一作。その想いを聞いた。

Coffee & Cigarettes 41 | 柄本佑

「タバコを吸い始めたきっかけは、ジャン· リュック=ゴダールの映画『勝手にしやがれ』ですね。主人公役のジャン· ポール=ベルモンドが、映画の中で両切りのタバコを吸っているのですが、唇についたタバコの葉を親指で拭いとる仕草が最高にカッコ良くて」

そう語るのは、映画にドラマに近年ますます活躍の幅を広げる俳優の柄本佑。2021年には『アクターズ·ショート·フィルム』(WOWOW)にも参加し、森山直太朗を主演に迎えた短編『夜明け』を監督。実は、それ以前からすでに何本もの短編を自主製作でメガホンを取ってきた。父・柄本明が所属する事務所「ノックアウト」の社長・小林勝彦の勧めで『帰郷★プレスリー』という36分の短編映画を製作したこともある。そして今回の新作『ippo』を撮るきっかけは『あきた十文字映画祭』。秋田県横手市十文字地区(旧十文字町)で、毎年冬の時期に開催される映画祭だ。



『ippo』は、そんな柄本が 2017年から 2022年の間に撮った3本の短編ムービー『ムーンライト下落合』(2017年)『フランスにいる』(2019年)『約束』(2022年)をまとめた短編集である。しかも3本すべてが、劇団『東京乾電池』に所属し、柄本の旧知の仲であり、ユニット「曖昧なカンパニー」も主宰する劇作家· 演出家の加藤一浩による原作。つまり本作は、加藤と柄本のコラボレーションによって生み出された短編連作集なのである。

冒頭を飾る『ムーンライト下落合』は、東京· 下落合にある長田(加瀬亮)のアパートに友人の三上(宇野祥平)が泊まりにきた肌寒い春の夜の一幕。眠れぬ夜に、お互いの「今」を探り合う会話劇は不思議なテンポ感が印象に残る。助監督は三宅唱、撮影は四宮秀俊、そしてプロデューサーは松井宏。実はこの豪華な座組、柄本が主演を務めた『きみの鳥はうたえる』(2018年)の撮影が延期になったことで実現したという。

Photo = Mitsuru Nishimura Styling = Michio Hayashi Hair and Make-up = Kanako Hoshino

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