ローリングストーン誌が選ぶ、2022年の年間ベスト・ホラー・ムービー10選

(左下から時計回りに)『SCREAM/スクリーム』、『PIGGY』、『プレデター ザ・プレイ』、『X エックス』。MORENA FILMS. UNIVERSAL PICTURES, HULU, A24

グランジ感満載のスラッシャー映画や禁断の地下室で起きる悪夢を描いた意外なあの映画など、ホラー映画が豊作だった2022年屈指の10作品を紹介する。

まずは結論から言おう。2022年は、良質なホラー映画が大量に誕生した一年だった。

知的でショッキングなユーロホラーから、莫大な製作費が注ぎ込まれたモンスター映画や意欲的なインディー映画と互角に渡り合った映画製作・配給会社A24の話題作に至るまで、そのバラエティは実に豊かだった。2021年の夏に大ヒットしたユニバーサル・ピクチャーズの『ブラック・フォン』(2021)のようなサクセス・ストーリーもあれば、口コミという昔ながらの方法によって高い評価を得た『バーバリアン』のような作品もあった。その一方で、『テリファー2』のような超低予算映画が最終的に1150万ドル(約15億3000万円)という興行収入を叩き出すという思いもよらない展開もあった(製作費25万ドル[約3300万円]という超低予算のDIY映画がここまでヒットしたことが意外だったのか、それとも殺人ピエロを描いた本作が138分という長尺物だったこと、あるいは2016年の「テリファー」の続編が製作されたこと自体が意外だったのか、サプライズの要因をひとつに絞るのは難しい)。ホラー映画の要素は、アニメーションからスーパーヒーローを描いた超大作に至るまで、ありとあらゆる作品に取り入れられた。まったく、サム・ライミ監督の『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は、『死霊のはらわた』(1981)がたまたまMCU作品になったようなものではないか。この一年を通してすべてのシリーズ物が平等に製作されていないことが証明されたとしても、過去作で活躍したお馴染みの俳優たちのカムバックも注目に値する(『ハロウィン THE END』のいちばん良い点は、THE ENDという約束を守ったことだ)。

ここでは、2022年を通して私たちの安眠を妨害し、不安をあおり、人目をはばからず映画館で大絶叫したことで大恥をかかせてくれただけでなく、ホラー映画というジャンルの力強さを再認識させてくれた10作品を取り上げる。

(この場を借りて、ここで紹介しきれなかった『Dashcam(原題)』や『Flux Gourmet(原題)』、『フレッシュ』、『The Innocents(原題)』、『マッドゴッド』、『ザ・メニュー』、『Smile(原題)』、『A Wounded Fawn(原題)』にも称賛を贈りたい。生粋のホラー映画ファンの度肝を抜いた韓国発ゾンビ映画『哭悲/THE SADNESS』のように救えないくらいグロテスクな作品を“おすすめする”のもどうかと思うが、同作がホラー映画本来の目的を見事に達成している点は認めなければならない。『哭悲/THE SADNESS』をご覧になる方は、その点を十分踏まえた上で、慎重に鑑賞していただきたい)。

10位『SCREAM/スクリーム』
日本公開終了、各社配信で視聴可能

BROWNIE HARRIS/PARAMOUNT PICTURES



あなたは他のホラー映画をおちょくりながらも、それに敬意を払うことを忘れないタイプのホラー映画はお好きだろうか? もし好きだとしたら、大ヒットホラー「スクリーム」の通算5作目となる本作は、きっとあなたを狂喜乱舞させるに違いない。監督を務めたのは、挑発的という点では本作とほぼ互角の『レディ・オア・ノット』(2019)のメガホンをとったマット・ベティネッリ=オルピンとタイラー・ジレット。両者によって「スクリーム」シリーズは、リメイクないしリブートと有毒なファンダムの時代にふさわしいものにアップデートされた。本作では、カムバックを果たした初代ファイナル・ガールのネーブ・キャンベルに加えてドラマ『ウェンズデー』(2022)で主役を演じたジェナ・オルテガをはじめ、大勢のZ世代俳優たちが逃げ惑う姿を楽しむことができる。もちろん、製作陣には何らかの思惑があるのかもしれないが、ゴーストフェイスが巨大なナイフでティーンエイジャーたちをひとりまたひとり消していくシーンが与えてくれるゾクゾク感は健在だ。スラッシャー映画の門下生である両監督は、2022年においても原作シリーズを裏切らずに皮肉満載のホラー映画をつくれることを教えてくれた。皮肉とホラーは一見矛盾するようだが、両立可能であることが証明されたのだ。

9位『Nope/ノープ
一部劇場公開中、12月23日よりデジタル先行発売開始、1月6日よりDVD他発売開始。

UNIVERSAL PICTURES



ジョーダン・ピール監督は、本作を通じてスピルバーグ的な仮説を検証しようとしている。その仮説とは、『未知との遭遇』(1977)に登場する宇宙人の母船が、実は『ジョーズ』(1975)の巨大な人喰いザメのような危険な存在だったらどうする? というものだ。手に汗を握るハラハラドキドキの展開というテンプレートには忠実でありながらも、超大作物には批判的なピール監督の長編監督第3作となった本作は、革新的という点では『ゲット・アウト』(2017)に劣るし、背筋が凍りつくような恐ろしさという点では『アス』(2019)に及ばない。それでも、空を飛ぶ謎の飛行物体を描いた1950年代のSF映画を現代風にアップデートした本作はどこまでも不気味で、UFOのような物体が獲物を探す捕食動物のように空を飛び回るシーンはただただ恐ろしい。ダニエル・カルーヤとキキ・パーマー扮する兄妹が人類に紛れ込んだ宇宙人の存在を確かめようとする一方で、スティーブン・ユァン演じる元子役スターと暴れん坊のチンパンジーの伏線は恐怖の一言に尽きる。観るたびに面白くなり、不安が募る——本作はそんな映画である。

Translated by Shoko Natori

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