U2(Photo by PHOTOFEST)

U2の歴史を一挙総括。話題の新録アルバム『Songs Of Surrender』のリリースを記念して、米ローリングストーン誌が厳選した名曲ランキングをお届けする。

U2が40年以上のキャリアを通して発表してきたベストソング40曲を、”2023年版”の新たな解釈で新録音したニューアルバム『Songs Of Surrender』を発表。世界中で大ヒットした代表曲の数々が、新たなアレンジと、曲によっては新たな歌詞が施され、全く新しい楽曲へと生まれ変わった。

新たに録音された40曲は、4人のメンバー各自の名義で4枚の“アルバム”にまとめられ、CDまたはLP4枚組ボックスセットの形態でリリースされる。プロデュースと編集はジ・エッジが務めた。「曲同士が互いに作用を及ぼすのを聴きながら、4枚分の曲順を決めていくのは実にわくわくする作業だった。あっと驚かれるような曲と曲の並びを見つけるのは、ちょっとしたDJ気分だった。明確な違いを持つ4枚のアルバムができあがると、それぞれにおけるリーダー的存在がどのメンバーになるのかは自ずと明らかだったよ」と彼は振り返っている。




1976年、後にU2となるメンバーが初めて集まった高校時代、彼らはまだまともに曲も作れなかった。その後、ダブリンの二流カバーバンドとして「Cartoon World」や「Science Fiction Tune」などの習作を仕上げるまでに数年かかっている。ところが、70年代から80年代へと移り変わるのを機に、どこかでスイッチが入った。彼らの中でインスピレーションが湧き上がり、「Out of Control」や「I Will Follow」などの名作を次々と世に出した。

1980年のデビューアルバム『Boy』には、当時のレバートリーの中から選りすぐった作品が収められた。それからわずか3年足らずで、政治色の濃い名曲「Sunday Bloody Sunday」や「New Year’s Day」が生まれる。アルバム『The Joshua Tree』がリリースされる頃には、デビューからわずか7年のキャリアしかないU2が、時代を代表するソングライターの地位を獲得するまでに成長した。さらに90年代へ入っても、彼らの勢いは止まらない。そして2000年代の彼らは、よりシンプルなサウンドへ回帰し、「Beautiful Day」や「Moment of Surrender」といった名曲を送り出している。2014年のアルバム『Songs of Innocence』で彼らは、自らのルーツを語っていた。彼らの歴史の中から厳選した50曲を、ランキング形式で紹介しよう。



(★:『Songs Of Surrender』収録曲)


50位「40」★

歌詞は、旧約聖書の詩篇を書いたダビデの影響を大きく受けている。「聖書に登場するダビデのキャラクターには、以前から注目していた。彼は間抜けな人間だと思う。それに聖書に登場する神から選ばれし人々が、皆揃って嘘つきや詐欺師や密通者や人殺しなんだから、面白くてたまらない。当時の僕がそのどれかは分からないが、間違いなく僕はダビデに通じるものがあった。僕は自分流の“詩篇”を書いてみたのさ」とボノは語った。「わたしは耐え忍んで主を待ち望んだ」と聖書の詩篇40から引用したU2バージョンの詩篇「40」は、『War』の締めくくりに相応しい。コンサートの最後にオーディエンスが全員で合唱する定番曲にもなった。




49位「Numb」

元々は『Achtung Baby』向けに作られたものの収録されなかった、「Down All the Days」という楽曲をベースにした『Zooropa』のシングル曲。『Achtung Baby』の20周年記念盤で「Down All the Days」が世に出た時のインタビューでジ・エッジは、「錯乱したエレクトロニックなバッキングトラックに、ありがちなメロディと歌詞を乗せた曲」と評価している。「悪くはなかった」とジ・エッジは言う。「Numb」では、元々ボノが歌っていたメロディをジ・エッジの無表情なラップに置き換えて、音の外れたノイズとサンプリングを散りばめている。「何がしたかったかというと、過剰なストレスを受ける感覚を再現しようとしたんだ」とボノは言う。「サッカー場の歓声、禁止事項の羅列、陳腐なソウルのコーラスなんかを入れてみた。そして、ラリー(・マレン・ジュニア)が初めて(バックコーラスで)参加している」。



48位「Acrobat」

『Achtung Baby』の最後から2番目に収録された曲。ジ・エッジは、「僕らにとって馴染みのない拍子の曲だ。8分の6拍子に近いアイルランドの伝統音楽のリズムで、ロックンロールにはまずあり得ないリズムだ」と説明する。ダンスミュージック中心のアルバムを目指して、ジ・エッジがKMFDMやアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンらのインダストリアル・サウンドを吸収する一方で、クリームやジミ・ヘンドリックスなどのクラシックロック育ちのマレンが、型にはまらないドラミングスタイルで曲のリズムを作り出した。最終的には、伝統と革新をミックスした典型的なU2サウンドになっている。



47位「North and South of the River」

ボノが「Sunday Bloody Sunday」を書いた時、彼は怒れる22歳だった。それから15年後、北アイルランド紛争という重いテーマを取り上げた時の彼は、怒りに任せて叫ぶというよりも、真剣に訴えるやり方へとシフトしていた。「悪が蔓延っていた。それでも愛は失われなかった。これからは愛が世界の中心になるんだ」と彼は歌う。「North and South of the River」は、1997年のシングル「Staring at the Sun」のB面に埋もれていた。しかし、1998年に発生した痛ましいテロ事件の犠牲者を追悼するアイリッシュTVの番組に出演して披露したバージョンは、平和を願う最高の賛歌だった。



46位「Sweetest Thing」

曲はまず、ボノによる妻アリへの謝罪から始まる。妻の誕生日にもスタジオへ籠もって作業していたため、妻が腹を立てたのだ。しかしその甲斐あって、バンドは大きな成果を手に入れることとなる。当初はシングル「Where the Streets Have No Name」のB面としてリリースされた「Sweetest Thing」だったが、バンドはボーカルとギターのテクスチャーに手を加え、1998年のベスト・アルバムに収録した。またミュージックビデオには、ボノがアリにプロポーズするシーンもフィーチャーされている。『Pop』や『Zooropa』といったアルバムを経て、『All That You Can’t Leave Behind』へと続く過程で、バンドはメロディ重視の原点へと回帰していく。「ポップの本来あるべき姿だ。現実世界で作るものではなく、究極の純粋さから生まれて来るのさ」とジ・エッジは言う。


Translated by Smokva Tokyo

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