Saucy Dog、「国民的バンド」が生み出した一体感【ツタロック2023レポ】

Saucy Dog(Photo by Tatsuya Shiraishi)

3月19日に開催された「ツタロックフェス2023」。Saucy Dogのライブレポートをお届けする。

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足の踏み場ない。それぐらい隅から隅まで大勢の人、人、人。その人波をかき分けてなんとかフロア中央に辿り着くと、ステージにはSaucy Dogの姿があった。MCでせとゆいか(Dr, Cho)が「コロナ前、Saucyはこんなにたくさんの人の前でフェスができていなかった」と言ったように、2020年以降の彼らの広まり方は凄まじかった。日本武道館公演を成功させて、アリーナとホールツアーを敢行し、17本のタイアップ、去年末は「第73回NHK紅白歌合戦」に初出演を果たし、今や誰もが認める国民的バンドにまで上り詰めた。

そんな彼らのステージは、ストリーミングの累計再生回数3億回を突破した「シンデレラボーイ」で幕を開けた。ギターのイントロから「おお!」と歓声が起こり、1曲目からクライマックスを迎えるような始まりだった。そこから石原慎也(Vo, Gt)の「楽しんで行こうぜー!」という投げかけから「雀ノ屈伸」を披露すると、グワっと熱気が起こる。“カーテンの向こう側 新しい朝に希望を感じてる 君もそうかな?”と歌った後、石原が「そうだといいなぁ!」と声を飛ばすと賛同する観客の腕が上がる。MCになり、せとが口を開く。「1カ月くらいライブをお休みしていたんですけど、その間に普通に(ライブで)声を出してよくなっていたりとか、お客さんの仕切りもなくて、あとはマスクをするだけで。前のような状況に戻ってきているのが本当に嬉しく思っています」と気持ちを伝えた。

そして石原が静かに深呼吸をして「大切な歌を……」と言って、「いつか」の演奏を始めた。ステージの明かりが落ちて、1灯のスポットライトが石原だけを照らす。1人になった男が彼女と過ごした2人の物語を振り返り、そこから秋澤和貴(Ba)のベースとせとのドラムが重なって、色とりどりのライトが曲中の2人が見てきた景色を走馬灯のように表現。“今になってさ 思い出してさ 後悔じゃ何も解決しないさ”と激しくなる歌と演奏が、喪失感と虚しさを激情的に映し出す。赤、青、黄、白とチカチカと激しくステージの景色が変わる。そしてバン!っと再び真っ暗になって、またも1灯のスポットライトが石原を照らした。“僕の見た景色を全部 君にも見せてやりたかったんだ”と声を震わせながら歌った。たった5分で2時間以上の長編映画を観たぐらい、完璧な歌と演奏と演出だった。

石原が「一緒に歌いたいなと思うんだけど、みんな頑張れそうですか? みんな誰かのために生きてるあなたへ」と言って「優しさに溢れた世界で」を演奏すると、大型スクリーンに歌詞が表示された。観客みんなが歌ってる。満面の笑みでせとが右手を高く上げて、秋澤がベースを掲げ、「声出しおかえりー!」と石原。大きな拍手と歓声が起こる中、「俺たちの今一番大事な歌を」と言って「怪物たちよ」へ。「精一杯、今を生きようと悶えていると、大好きなこともつい疑ってしまう時もあると思うんやけど、失敗は全然間違いじゃないと思っております。前に進むために立ち止まったっていいんだよなって。そんな歌を最後に」と話しラストソングは「現在を生きるのだ。」。1番の演奏が終わったところで石原が「歌おう、あなた自身に!」と発し、会場一体がバックコーラスを歌う中で“傷だらけでも僕らは美しい”と生きることへの賛美を届けた。みんなが笑顔になって手を叩いて歌ってる。バラバラな世界の中で僕らはあの瞬間、1つになれたのだ。




<イベント情報>

ツタロックフェス 2023 supported by Tポイント
公演日:2023年3月19日(日)
会場名:幕張メッセ国際展示場 9・ 10・ 11ホール
主催:CCCミュージックラボ(株)/ライブマスターズ(株)
企画:CCCミュージックラボ(株)
制作:ライブマスターズ(株)
運営:(株)ディスクガレージ
特別協賛:CCCMKホールディングス(株)
問い合わせ: https://cccmusiclab.com/tsutarock2023

<公式SNS>
Twitter:https://twitter.com/tsutarocklive
instagram:https://www.instagram.com/tsuta_rock_live_official/
Facebook:https://www.facebook.com/tsutarocklive/

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