NY地下鉄のホームレス殺害事件、市長が「精神疾患が深刻な問題」と語る背景

ジョーダン・ニーリーさん殺害事件に対する市警の対応に抗議する人々(ALEX KENT/AFP VIA GETTY IMAGES)

マイケル・ジャクソンの物まねをしていたダンサーのジョーダン・ニーリーさん(30歳)を米ニューヨークの地下鉄で殺害した人物は、24歳の元アメリカ海兵隊員ダニエル・ペニーであることが確認された。警察幹部2名がニューヨークタイムズ紙に明らかにした。

【動画を見る】元海兵隊員の男に首を圧迫されるジョーダンさん

報道によると、5月1日にホームレスだったニーリーさん(精神疾患を患っていたとみられる)がニューヨークの地下鉄で叫び声をあげながら突飛な行動をとっていたところ、ペニー容疑者が地下鉄車両内でニーリーさんの首を絞め、死亡させたとみられる。事件の一部はフリージャーナリストのフアン・アルベエルト・ヴァスケスさんが動画で撮影していた。ヴァスケスさんがニューヨークタイムズ紙に語った話では、ニーリーさんは15分近くも首を絞められるまで誰にも危害を加えていなかったという。

4分近い動画には、停車した地下鉄車両の床の上で白人男性(ニューヨークタイムズ紙はペニー容疑者と特定)が黒人(ニーリーさん)の首を絞め、別の2人も加勢してニーリーさんの腕を押さえつけている様子が映っている。ニーリーさんが動かなくなるとペニー容疑者は立ち上がり、複数の人々がニーリーさんの身体を横向きにした。警察はペニー容疑者を拘束し、尋問した後、釈放したと報道陣に語った。

検視の結果、ニーリーさんの死因は首を絞められたことによる圧迫死で、故殺と断定された。

ペニー容疑者はニーリーさん殺害でいまだ起訴されていないが、刑事弁護人のトーマス・ケニフ氏を代理人につけたと伝えらえている。裁判になれば、ケニフ弁護士とマンハッタン地方検事局アルヴィン・ブラッグ検事の往年の対決になる見込み。ケニフ弁護士がニューヨークタイムズ紙に語ったところでは、同氏の経営する法律事務所レイザー&ケニフはネリーさん殺害事件に関し、地方検事局および警察署と連絡を取り続けているそうだ。

「ニーリー氏がダニエル・ペニーさんや乗客を激しく威嚇してきた際、ダニエルさんは周りの人々の手を借りて、助けがくるまで自分たちの身を守ろうとしました」と被告弁護団はローリングストーン誌に宛てた声明の中でこう述べた。「ダニエルさんは決してニーリー氏に危害を加えるつもりはなく、まさか死亡するとは予想できませんでした」。

ジョーダン・ニーリーさんの遺族は法律事務所ミルズ&エドワーズと代理人契約を結んだ。「今回の裁判を引き受けたのは、助けも介入もなく、息もできない状態での15分はあまりも長すぎるからです。乗客が地下鉄の床で死亡するなどあってはなりません」と、エドワーズ弁護士は声明を出した。

パフォーマーだったニーリーさんは、ニューヨークではマイケル・ジャクソンの物まねで知られ、マイケル風の格好をして乗客の前でムーンウォークを披露していた。「彼のダンスを見ると、いつも圧倒されていました」と、ニーリーさんを知るブレンナ・クロウリーさんはFacebookに投稿した。父親のアンドレ・ザッカリーさんがニューヨーク・デイリーニュース紙に語ったところでは、ニーリーさんは自閉症で、2007年に母親が殺されてからは精神疾患も患っていたという。2012年には、母親クリスティ・ニーリーさんを殺害して「遺体をスーツケースに詰め、ブロンクスに遺棄した」ニュージャージー出身の男性が、懲役30年を言い渡されたとジャージージャーナル紙が報じている。

甥のためにGoFundMeページを立ち上げた叔母のキャロリン・ニーリーさんは、「甥は心に傷を負いました。あんな風に、母親が無残に命を奪われるなんて予想もしていなかったんです」と述べた。「甥には大きな衝撃でした。事件のむごたらしさゆえです」。

Akiko Kato

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