けろりらが語る、TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の世界

「ぼっち・ざ・ろっく!」より(©はまじあき/芳文社・アニプレックス)

アニメ制作会社「CloverWorks」が、TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の制作を今回担当。そのなかでキャラクターデザイン・総作画監督を務めた、けろりら氏にここではインタビュー。もともと原作のファンで、「(アニメ化したくて)自分から動いて、いろんなプロデューサーに聞いていた」と語るくらい、ピュアな“作品愛”の持ち主でもある。ほぼすべての話数に原画として参加し、本作の作画におけるキーマンに聞いた創作の裏側。

【場面写真を見る】記事中に出てくる「ぼっち・ざ・ろっく!」のシーン

※この記事は現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.22」に掲載されたものです。

アニメ化したかった理由

ーアニメ化の話が浮上する前から、この作品でアニメを作りたい!と強く思わせたのはどういったところだったんでしょう?

けろりら 誰かがSNSで「ぼっち・ざ・ろっく!」のマンガを紹介していて、それがきっかけでなんとなく1巻を読んでみたんです。真っ黒な色に黄色い文字でタイトルが入っていて、表紙からすでに他の作品と違う感じはしていて。で、中身を読んでみたらやっぱり面白くて。バンドしたいけど声がかけられないとか、学校に行きたくないとか、キャラクターにネガティブな感情が入ってるじゃないですか。そういうところが今まで読んできた他の作品と違うと思いました。テンポもよくてギャグもいいし、1コマあたりの情報量が多いんですよね。吹き出し以外にもセリフがいっぱい書いてあって、常に何かが起きている。あと、バンド活動っていうメインのストーリーの軸があるところがいいなって思いました。目的があった上でキャラクターたちが一緒に成長していくというか。学生なんですけど、学校生活はまったくと言っていいほど描写されないし、いわゆる学園ものじゃないところも新鮮でした。絵の部分でも、デフォルメでヘンな顔がいっぱいあったり、あんまり見ない表現がたくさんあって、そこも魅力的に見えましたね。

ーアニメーターとしては、そういう魅力的なマンガを読んだ時って自分でアニメーションにしたい!って思うものなんですか?

けろりら お仕事で、こういう作品がありますとか、こういう次の企画があって参加してほしいですってお話をいっぱいいただくんですけど、そういうのを見ているうちに「これは自分で描いてみたい」と思う作品は出てきます。それは人それぞれだと思うんですけど、自分の場合は、デフォルメの効いたアニメ作品に惹かれるんです。リアルな表現があまり得意ではなくて、例えば「クレヨンしんちゃん」とか「ドラえもん」とかの方が好きな部類ではあって。「ぼっち・ざ・ろっく!」はいろんな表現の可能性が感じられて、描きたいなって思いました。今回、アニメ化したい作品があるって自分から話したのは初めてのことなんです。

ーそんなピュアな想いから始まって、今では携わった人たちがみんな面白がってくれて、作品に愛情を込めて接してくれていることはどう感じていますか?

けろりら 素直にうれしいです。スタッフも面白かったって言ってくれて、見てくれた人もよかったって言ってくれて。あとアニメ業界の同業の人ってどこか厳しい目で見ることも多いと思うんですけど、そういう視点の人たちも面白かったって言ってくれるのがうれしくて。絵がうまいとか、クオリティが高いってところじゃなくて、最初に「面白かった」って言ってくれるのがすごくうれしいですね。

ファン目線でいうと、自分が一番見たいと思うアニメを作りたいと思っていたので、それができたのかなって思います。斎藤くん(監督:斎藤圭一郎)の第1話(「転がるぼっち」)の絵コンテを読んだ時、自分が見たい絵コンテが読めた!って思いました。このままちゃんと作ったらいいものになるなって、当時思った記憶があります。

ー監督の斎藤さんはアニメーター出身の方ですが、だからこそやりやすかった部分もありましたか?

けろりら 理解はあるかもしれないですね。アニメーションに対して深いところまでわかってる。本人がアニメを描けるしめちゃめちゃ達者だし、表現にもかなり寛容というか、監督自身がいろんな表現が好きなところもあって。だから絵の領域に対しては、お任せな部分が多かったですね。絵コンテの段階で、映像としてどうなるかは監督自身で決めきってるんですけど、そこにどういう絵が乗るかは、割と自由に任せてくれたのかなって思います。

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