Dawesの快演再び フジロックを席巻した「西海岸ロックの後継者」来日公演レポ

Photo by Kana Tarumi

本格的に冬が到来した感のある11月15日、LAを拠点に活動するロックバンド、ドーズ(Dawes)が恵比寿リキッドルームにて単独来日公演を行った(その翌日には梅田クラブクアトロで大阪公演も実施)。昨年のフジロックで初来日を果たし、初日のフィールド・オブ・ヘブンでの圧倒的なパフォーマンスが大きな話題となった初来日から約1年ぶり2度目の日本公演だ。

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ドーズはテイラー(Vo,Gt)とグリフィン(Dr)のゴールドスミス兄弟を中心にLAで結成され、2009年に『North Hills』でアルバムデビューした。その前身であるSimon Dawesには近年音楽シーンで欠かせない存在となっているブレイク・ミルズがかつて在籍しており、現在も交流が続いている。ドーズに名を改めてからはプロデューサーのジョナサン・ウィルソンとの協働でよりフォークの要素も強まり、その60年代〜70年代のローレル・キャニオン周辺のフォーク・ロック・シーンの伝統を受け継ぐような音楽性が注目を集めた。実際にジャクソン・ブラウンのバックバンドを務めたり、テイラーは昨年のジョニ・ミッチェルとコラボレーションもしている。

このように西海岸由来のロック史に連なるバンドだが、来日に際してのインタビューではそのような扱いを受けることは光栄だとしながらも、意識的だったわけではないと語る。
最新作『Misadventures of Doomscroller』の制作中にはキング・クリムゾンやハービー・ハンコックを聴いていたというように、ジャズやプログレも参照しつつ自然と西海岸のサウンドが織り込まれていったようなサウンドで、すべての楽器が調和して立体的に配置された点で現代的なプロダクションが爽やかで心地良い。


テイラー・ゴールドスミス(Photo by Kana Tarumi)


グリフィン・ゴールドスミス(Photo by Kana Tarumi)

開演時間ぴったりに登場したのはゴールドスミス兄弟とキーボード奏者のリー・パルディーニ、ギター、ベース、そしてパーカッションの6名だ。1曲目は最新作より「Everything Is Permanent」。1分ほどかけてじわじわと熱を帯びていくようなイントロを経て、原曲のギターリフが繰り出される。それを受け取った客席からは歓声が巻き起こり、テイラーが歌い始めた瞬間にもまた歓声が響き渡っていた。ただでさえ音源では8分ほどある曲をしっかり10分ほど演奏し、すかさず「Still Feel Like A Kid」へ。たっぷりと顎髭をたくわえたテイラーの姿から放たれる情熱的なボーカルと、ロックンロール!と叫びたくなるほどの演奏にオーディエンスも負けじと「バッバッバー!」と歌う。とにかく盛り上がりが凄まじく、会場がエネルギーに満ち溢れていた。


リー・パルディーニ(Photo by Kana Tarumi)


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一方で、四つ打ちのリズムでダンサブルな要素の強い「Picture of a Man」のような軽快な楽曲も披露。歯切れよく言葉を並べていくような歌唱もリズミカルで、音楽性の幅広さを感じさせる。歌が終わるとさながら彼らが敬愛するグレイトフル・デッドのライブさながら、長尺のジャムセッションへ突入する場面が何度も見られたが、それが成り立つのも彼らの強靭な演奏力があってこそなのだ。

温まった身体をクールダウンさせるしんみりとした雰囲気の「Crack the Case」では、イントロでオーディエンスから「いいね!」と声が上がっていた。「日本のライブハウスツアーは初めて。良い夜にしよう」と言っていたテイラーの顔もほころぶ。続いてザ・フーの名曲「Baba O’Reily」へのオマージュのような電子音で始まった「Most People」は空間を切り裂くような快活なロックナンバー。ここでも当然アウトロでしっかりとジャムる。


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続く「Things Happen」は2015年の4thアルバム『All Your Favorite Bands』の冒頭を飾る1曲。原曲のイントロに至るまでじっくり1分かけ、歌が始まるまでにさらにもう1分かけるという贅沢なアプローチ。シンプルなフレーズとコードワークに、激しいドラムフィルが推進力を与える構成がかっこいい。

また、一部の楽曲ではノスタルジックな橙色の照明に染められたことも相まって、まるで彼らの過ごしたカリフォルニアの空気が再現されているように感じられた。例えば2011年の2ndアルバム『Nothing Is Wrong』に収録されている「Time Spent in Los Angeles」は、タイトル通りロサンゼルスで過ごした日々を振り返る内容。一方、同作収録の「A Little Bit of Everything」ではサンフランシスコが舞台となっている。どちらもテイラーは言葉を噛みしめながら、ときにギターから手を放して身振り手振りで語りかけるように歌っていたのが印象的だった。


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最新アルバムの1曲目「Someone Else's Café / Doomscroller Tries to Relax」は一際大きな歓声で迎えられた。骨太で熱いロックのアプローチとはまた違った、スティーリー・ダンのような洗練されたデザインの演奏だが、曲調が大きく変わるパートでのギターソロは極めてサイケデリック。さらに唸りを上げる強烈なドラミングとともにオーディエンスもヒートアップし、その拍手と歓声は次の曲のイントロをかき消す勢いだった。


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同じく最新作から披露されたクールでチルなムードの「Comes in Waves」は終始落ち着きながら美しいハーモニーを丁寧に重ねていく。ボーカルのハモりが美しいのもドーズの特長のひとつだろう。そして次にシームレスに繋いだ代表曲「When My Time Comes」のイントロが聞こえると、会場はこの日イチの大歓声に包まれる。高揚感溢れるリズムに休符を挟んで訪れるコーラス部ではオーディエンスのシンガロングが轟き、最後はアカペラでの大合唱も巻き起こるという奇跡のような光景が広がっていた。もはやこのままでも大団円だったが、最後の最後にもうひとつの代表曲「All Your Favorite Bands」を披露。この曲を待ちわびたファンも多かっただろう。あの場にいた誰もが“And may all your favorite bands stay together”(あなたの大好きなバンドが解散せずに続いてくれますように)という言葉をドーズ自身に捧げたい気持ちになっていたに違いない。その後アンコールはなかったが、機材を片付けるスタッフが出てくるまで5分ほど拍手が鳴り止まない大名演であった。

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ドーズ
『Misadventures of Doomscroller』
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日本盤:SHM-CD仕様、ボーナス・トラック1曲収録、歌詞対訳&解説付
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