レディー・ガガのブレイク以降、いわゆる「反逆のセレブ」「華やかなエレクトロ・ポップ」といったイメージを前面に出した音楽が増殖した(日本ではゼブラクイーンがそれに該当するんでしょうか?)。どれもこれも「ガガっぽいもの」って意図が見え見えでダサイ。ガガ様は唯一無二だからクール・アイコンなのであって、それをマネしたらクールでも何でもないだろう。ちなみにゼブラクイーンこと仲 里依紗はガガ様の曲を大音量で聴きながら爆睡するそうだが(それぐらい好きだというエピソードらしい。いかにも作り話っぽいですね)、これを聴いたらショックで爆死するんじゃないだろうか。妄想を交えながら本作が何なのか説明すると、どいつもこいつもムカつくんだよ!ってな感じで、中指立てながらバキバキのエレクトロを炸裂させる男女2人組=クリスタル・キャッスルズの新作なのである。
 全編に漂う緊迫感、不穏なノイズ。エレクトロという意匠をまとってはいるが、そのなかにあるのはイギー・ポップ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、メイヘム、ツー・ライヴ・クルーなどの遺伝子である。2作目となる本作でも荒涼とした響きのサウンドを聴かせてくれるが、その背景にある凶暴さはよりパワーアップ。メロディアスな旋律をちりばめた幻想的なトラックもあるし、パーカッションを使ったハウスっぽい展開の曲もあるのだが、ぜんぜん楽しげじゃない。アイスランドの教会、オンタリオの自家製キャビン、デトロイトの汚いガレージなど、ツアーを通して訪れた世界各国でレコーディングされたという本作。生々しい息づかいが感じられるのだ。

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