ザ・ブラック・キーズ。シンガーであり、ギタリストであるダン・オーバックとドラムのパトリック・カーニーは、偉大なるバンドの精神を持った2人組バンドである。1年間のソロ活動後(オーバックのソロ・アルバム『Keep It Hid』、カーニーがドラマーとして参加したヒップホップ・プロジェクト=ブラックロック)、初となるアルバムは騒がしくありながらも、決して詰め込みすぎた感のない作品に仕上がった。
「エヴァーラスティング・ライト」では、オーバックのファルセットが、ミイラとなった王子が包帯の下で歌っている様子を表現する。「テン・セント・ピストル」では、恐怖が次々と押し寄せる。ガレージ・クインテットのギター、オルガン、そして重い死の行進曲。まるで墓場でコンサートが行われているかのように、ひんやりとした空気を漂わせる。デンジャー・マウスがプロデュースした2008年の『アタック&リリース』と同じくらい質の高い仕上がりだ。しかし、主にアラバマ州のマッスル・ショールズでレコーディングされた『ブラザーズ』は、苦悩や悲しみを表現する曲の比率が高い。「ザ・オンリー・ワン」はスローで、気取らない悲しみを表現した曲。ポップスとしてはあまりに手荒く扱われているが、ブルースに近いところならヒットは間違いない。
 私なら最後の曲に「アイム・ノット・ザ・ワン」を選んだだろう。さびれた電子ピアノ、心がしめつけられるブリッジ、そしてオーバックの憔悴したボーカル。たっぷりの油で揚げた“間違った愛”の歌である。

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