アメリカでヒットした「Paper Planes」から3年。M.I.A.にとって3枚目のアルバムは、これまでの作品のなかで最も攻撃的で対立的、そして感情的な作品となった。ラスコ、スウィッチ、ブラックスター、ディプロと彼女の兄弟であるSusuといったプロデューサーたちの協力を得て、エレクトロ・パンク調に仕上げられている。M.I.A.はそれぞれの曲にちょっと変わったサプライズを込めている。「Born Free」にはスーサイドのオルガンを、「Tell Me Why」にはゴスペルを、「Space」にはデヴィッド・ボウイ風のロボット衣装を……といった具合に。また1982年に発表されたオランダのシンセ・ポップ「It Takes a Muscle to Fall in Love」をカヴァーした奇妙なナンバーも収録されている。M.I.A.は、パブリック・エネミーやN.W.A.以降の誰よりもノイズを好む。アラームやサイレン、爆発音に貪欲な耳を持つ彼女は、あらゆる衝撃をブラック・ビートに変えてしまう。M.I.A.が自身のルーツを固持すること、つまり、戦争地帯、難民キャンプ、公営住宅だけでなく、美術学校やダンスクラブといったテーマを扱うことを不快に思う人もいるだろう。しかしながら、セックス(「XXXO」)、ドラッグ(「Teqkilla」)、爆弾(「Lovealot」)について不満をぶちまける時、その音楽はより発展的になるといえよう。彼女はさまざまな立場や視点を取り上げる。なぜなら、それこそが彼女が彼女である理由だからだ。

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