前回ブラック・クロウズが活動を停止した2002年、バンドにはもっともな理由があった。彼らの前作『ライオンズ』は、退屈になる一歩手前だったのだ。唸りを上げる電気の教会のような「ソウル・シンギング」といった素晴らしい楽曲も、平凡な演奏で覆われていた。クロウズは今年限りで、再び無期限の活動休止を予定している。けれどもロビンソン兄弟──シンガーのクリスとギタリストのリッチ、そして、ミシシッピのギターの魔術師ルーサー・ディッキンソンを含む過去最高のラインナップは、彼らのカタログから選んだ楽曲をスタジオ・ライヴで演奏したCD2枚組で、非常に良い状態にある。ギターはほぼアコースティックだが、それはエレクトリックの宇宙からの逃避ではない。96年の佳作『スリー・スネイクス・アンド・ワン・チャーム』に埋もれていた「グッド・フライデイ」や「ソウル・シンギング」といった曲に重きが置かれている一方で、アレンジは近年のツアーを踏襲。94年の『アモリカ』から選曲された2曲のメドレーは、『ワーキングマンズ・デッド』における68年のフィルモアからの風を感じさせ、「マイ・モーニング・ソング」における2倍に膨れ上がったゴスペル隊は、デラニー&ボニーの71年のアコースティック・ジャム『モーテル・ショット』を想起させる。『クロウオロジー』には「リメディ」のようなクラシック・ロック・ラジオの定番が含まれているが、アルバムはグレイテスト・ヒッツよりもずっと素晴らしく、それだけでもバンドを続ける理由になる。

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