ブライアン・ウィルソンとジョージ・ガーシュインには、いくつかの共通点がある。どちらも兄弟と音楽的なパートナーシップを組んで成功し、どちらもヨーロッパのクラシックの伝統に基づく洗練されたハーモニーを、パンチの効いたポップ・ソングと結びつけた。ガーシュインは脳腫瘍によって38歳の若さで死に、ドラッグと精神疾患は60年代の後半にウィルソンを隠居へと追いやる。どちらも若くして輝き、燃え尽きたのだ。そしてどちらもポップ・ミュージックにおけるメロディ・メイカーで、紛うことなき天才である。
 ここ数年、ある一定の年齢を迎えたロッカーたちは、あきれるようなビッグ・バンド・ヴァージョンのポピュラー・スタンダードを提供することで、商業的な金脈を掘り起こし続けている(ロッド・スチュワート、アンタのことだ)が、ウィルソンのプロジェクトはもっと紳士的で、もっと上出来だ。彼は「サマータイム」をドゥー・ワップ・バラードに変え、「誰にも奪えぬこの想い」にブラスと瑞々しいハーモニーの魔法をかけ、「誰かがわたしを見つめてる」をブロードウェイからカリフォルニアへとテレポートさせる。その結果は、かわいくて、奇妙で、ほんの少しサイケデリックでシンフォニックなラウンジ・ミュージック。アルバムが「ラプソディ・イン・ブルー」で幕を閉じる頃、あなたはこう問いかけずにはいられないだろう。
「ブライアン・ウィルソンはベビー・ブーム時代のジョージ・ガーシュイン? それともガーシュインが最初のビーチ・ボーイ?」

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