カリフォルニア・ガールについて歌った偉大なポップ・ソングは数知れず、そのうちのいくつかは実際にカリフォルニアの女の子たちによるものだったが、ケイティ・ペリーのナンバー・ワン・スマッシュ・ヒットは最も女の子らしくて、最もカリフォルニア的なものだ。アルバムを通して、彼女はハリウッド・ヒルよりも古いアメリカのティーン・ポップ・サウンドを追い求めるが、彼女の最も優れた曲のひとつ「ジ・ワン・ザット・ガット・アウェイ」には、こんなシーンがある。「わたしたちが初めて出会ったのは、高校を卒業した次の夏/レディオヘッドを聴きながら、あなたのムスタングで愛し合った」。彼女はそこから、陽射しをたっぷり浴びたドラマを積み重ねる。
『ティーンエイジ・ドリーム』は、かつてグウェン・ステファニーが量産していたような、南カリフォルニア風の野心とビートに溢れたプール・パーティ・ポップ。ドクター・ルークやマックス・マーティン、トリッキー・スチュワート、スターゲイトといったプロに助けられ、ペリーの出世作となった『ワン・オブ・ザ・ボーイズ』を、遥かに凌ぐ内容だ。
 歌われている主なテーマは、ラッセル・ブランドとセックスするのはどんなに最高か(「ハミングバード・ハートビート」)、ラッセル・ブランド以外の男とセックスするのはどんなに最低か(「パール」)、本物の愛はどんなに素晴らしいか(「ティーンエイジ・ドリーム」)、たとえそれが映画のようにいかなかったとしても(「ノット・ライク・ザ・ムービーズ」)…といったこと。だが、クリスチャンとしての彼女の出自も一度だけ、ペルシャの王様と結婚し、ユダヤ人虐殺計画について知ることになった孤児エステルについて歌った「フー・アム・アイ・リヴィング・フォー?」に現れる。彼女がリアーナのように歌うせいか、それはとりわけダークで説得力があるが、『ビリオネア』のシンガーだった元カレのトラヴィー・マッコイについて歌ったと思しき「サークル・ザ・ドレイン」は、もっとダークな、ドラッグ漬けになったロッカーへの三行半だ。けれども彼女には、18歳の誕生日に彼とお揃いのタトゥーを入れる「ジ・ワン・ザット・ゴット・アウェイ」の、ショッピング・モール風ロマンスのほうがしっくりくる。「わたしはジューンで、あなたはジョニー・キャッシュ」とペリーが歌うとき、彼女は『ウォーク・ザ・ライン』に登場する小ぎれいなハリウッド版のジューンとジョニーを想像しているのだとわかるが、それは彼女を本物のカリフォルニア・ガールにしている理由の、ほんの一部でしかない。

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