サンキュー、ハッピー・バースデイ

ノスタルジックな旅は未来からの衝撃にもなる? ケイジ・ジ・エレファントはそう思っている。ケンタッキーのバンドの2009年のデビュー作は、パンク、ガレージ、ブルースといった下品で古典的なサウンドと、デジタル化された21世紀の輝きの中間地点に印を付け、グループに「エイント・ノー・レスト・フォー・ザ・ウィキッド」というロック・ラジオ・ヒットをもたらした。『サンキュー、ハッピー・バースデイ』も同じようなところから始まる。「オールウェイズ・サムシング」の、ムーディーなファズとふらついたファンクに乗ったシンガーのマシュー・シュルツは、ウブな妄想でいっぱいだ。“曲がり角のあたりで/いつも何かがキミを待っている”と、どこかリアム・ギャラガーのようで、どこか電動芝刈り機のような金切り声で歌う。
 ケイジ・ジ・エレファントは、テレビやボヘミア風の流行について罵る「セル・ユアセルフ」や「インディ・キッズ」で脇道に外れつつも、『サンキュー、ハッピー・バースデイ』のほとんどで、張り詰めた馬鹿騒ぎを続ける。彼らはギターをパーカッションのように扱い、あらゆる種類の金属音や破裂音、衝突音で曲を満たし、ブンブン唸るキーボードで、騒音を増幅させている。彼らにはさらに、ポップ・メロディという秘密兵器もある。「シェイク・ミー・ダウン」は夢見心地なビートルズ風のサイケデリアで、「ラバー・ボール」では、子守唄のためにケイジは静まり返る。“俺が手に入れたものといえば、ほんの少しの愛だけ”とシュルツは囁くが、実際にはもうひとつ手に入れている。最も優れた若いロックバンドの一組という称号だ。

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