グレッグ・オールマンのブルースの狼のような唸り声と、ハモンドB3オルガンへの魂の礼拝のような猛突進は、オールマン・ブラザーズ・バンドのエレクトリックな即興演奏そのものである。だから他の様式で、オールマン印の歌声と演奏を聴くのは驚きだ。けれども『ロウ・カントリー・ブルース』は、ほどよく泥臭い混沌へと連れて行き、故郷に帰ったような気持ちにしてくれるのである。それは彼のバンドに使命を与えてサウンドを形作った魂、B.B.キングやマディ・ウォーターズ、スキップ・ジェイムス、オーティス・ラッシュとの、癒しの旅だ。
 T・ボーン・バーネットによってプロデュースされた、オールマンの1997年以来となるソロ・アルバムは、実質的にはすべてカヴァー曲であり、1曲の例外も、ほとんどカヴァーとみなしてよいものだ。ウォーレン・ヘイズとの共作による「ジャスト・アナザー・ライダー」は、明らかにオールマンズ・ブラザーズの代表曲「ミッドナイト・ライダー」の続編で、ブラスと、少しの後悔で満たされている。
『ロウ・カントリー・ブルース』を薄気味悪くしているのは、重苦しく、意図的に古めかしくされたバーネットのプロダクションと、オールマンのヴォーカルの蒼い影だ。スリーピー・ジョン・エステスの「フローティング・ブリッジ」に刻み込まれたオールマンの悲哀は、71年の『ライヴ・アット・フィルモア・イースト』の「ステイツボロ・ブルース」で張り裂ける若い男と、それほど変わっていない。オールマンはいつでも、一生消えない傷を負っているかのように歌う。エステスが37年に発表したこの曲は、彼が溺れて死にそうになった時のことを書いたものだ。昨年の肝臓移植を含めたいくつもの悲しみを乗り越えてきたオールマンは、そこに容易に自身を投影し、慎ましくも権威ある彼のギターとベース、鉄の空の黒いカラスのようにオールマンの周りを飛び交うドクター・ジョンのピアノで、エステスの物語を飾っている。
『ロウ・カントリー・ブルース』は、過去のレパートリーを参考に、もう少し変化をもたせることができたかもしれない。73年のソロ・アルバム『レイド・バック』で取り上げたカントリーの財産、ジャクソン・ブラウンの「ディーズ・デイズ」から、エコーを減らすようにして。現在も偉大なツアー・バンドのフロントに立ち続け、69年から大陸中の憂鬱を癒しているその歌声にすべてがあるのだとしたら、それはあたかもバーネットが、空っぽのベッドルームと、永遠に続く道という幻想を創り出すために、力を入れ過ぎてしまったかのようだ。

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