ビコーズ・オブ・ザ・タイムス

ガレージ・ロックとサザン・ロックを現代的に鳴らすキングス・オブ・レオンのサードアルバム。冒頭の「ノックト・アップ」は本作の始まりにふさわしい、彼らの真骨頂とも言える曲だ。10代のお先真っ暗な絶望的恋愛ドラマ……キングス・オブ・レオン以外には、もう誰もそんな作品をまともに書こうとはしない。  しかし、ここでは主人公が妊娠したアバズレ女を連れ、州境を目指して車をブッ飛ばし、逃避行を試みる。それをギターの音が盛り上げる。車と女とテンコ盛りのギター。それがこの曲であり、さらにキングス・オブ・レオンの魅力なのだ。  このアルバムにはそんな曲が満載だ。つまり、田舎の純朴な青年を、盗人や逃亡者へと、そして死者へとたぶらかしていくダメな女たち。身を落としていくのを喜ぶ青年たち。こうした物語がキングス・オブ・レオンの作品に現れ始めたのは、やはり傑作だった前作からのこと。  デビューした当時は全員がまだウブすぎて、その可能性に気づく者もなかった。サウンド的にも、別にルーツ・ミュージックに忠実なわけではなく、大胆にUKロックや今の音楽シーンからの影響を鳴らすから、エッジが立っている。誰もが想像しなかったところまで彼らはこの作品で到達しているのだ。

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