03年、8枚目のアルバム『ザ・ブラック・アルバム』をリリースすると同時に現役引退宣言し、ヒップホップ・シーンから姿を消そうとしたジェイ・Z。06年、そんな彼が引退を撤回してミュージック・シーンに戻ってきた。同じ年にリリースされた9枚目のアルバム『キングダム・カム』は、アメリカ国内で話題を集めたものの、ジェイ・Zのオリジナリティを十分に活かしたサウンドとは言えなかった。いつだって彼のファンが求めているものは、“ジェイ・Zならではのフレッシュなヒップホップ”なのである。それから約1年を経て、10枚目のアルバム『アメリカン・ギャングスター』がリリースされた。このアルバムは、映画『アメリカン・ギャングスター』(08年1月に日本公開予定)のサウンド・トラックでもある。70年代のニューヨークに実在した伝説のギャング・スターと彼を追いかける刑事の物語……。ジェイ・Zはこの物語にインスパイアされて、70年代のファンク色が濃いバック・トラックと、重厚なラップで自分の音楽を表現してみせた。ジェイ・Z曰く、「この作品は、1枚のパッケージ・アルバムとして聴くべき」とのこと。そのため、iTunes上でのダウンロード販売は行っていない。ストリートの匂いとジェイ・Zの芸術性が一体となったダイナミックなヒップホップ・アルバムだ。

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