米R&BプロデューサーたちがK-pop市場に活路を見出した理由

2017年ビルボードアワード授賞式でのBTS(Photo by Steve Granitz/WireImage)

アメリカのメインストリームにおいて、かつての存在感を失いつつあるR&Bのソングライターやプロデューサーたち。彼らが活路を見出したK-popマーケットにおいて、その音楽が支持される理由とは?

ブルーノ・マーズ、タミア、レデシーとの楽曲がグラミーにノミネートされたクロード・ケリーは、2007年に初めてソングライターとして出版契約を結んだ。当時彼はR&Bのソングライティングにおいて、以前はなかった制約のようなものを感じ始めていた。ヒップホップとの境界線が曖昧になるにつれて、凝ったメロディは求められなくなり、ラップの破壊力を強調するシンプルなループと強靭なリズムが重視されるようになっていった。ケリーは当時をこう振り返る。「いつのまにか、ブリッジのない曲ばかりを書くようになっていた」

「『その16小節にはラップを乗せるから空のままでいい。ラジオでヒットさせるにはラップがないと』当時は誰もがそんな風に話してた」ケリーはそう話す。「よりスローで時間をかけて展開していく、ブリッジや様々な楽器を用いた伝統的なソングライティングは、もはや求められなくなっていたんだ」

現在もアメリカのメインストリームは、ミニマルさを強調したラップにほぼ独占されている。そういった状況下で、ブリッジを重視する伝統的なソングライターたちは、韓国という意外なマーケットに活路を見出した。大胆なコードチェンジ、リッチなハーモニー、そしてシンガーの力量やアドリブ力が問われるブリッジなど、2000年代初頭のメインストリーム系R&Bにおける凝ったソングライティングは、K-popのシーンでは今なお高く評価されている。

3月24日付のビルボードのK-pop 100チャートには、その傾向が顕著に表れていた。かつてのジェイドを思わせるレッド・ヴェルヴェットの『バッド・ボーイ』(最高位2位)、ヘイズの典型的なネオ・ソウル『ジェンガ』(最高位4位)、タミアの『オフィシャリー・ミッシング・ユー』を思わせるムーンムーンの『コントレイル』、そしてスティーヴィー・ワンダーの影響を4分間のポップソングに落とし込んだメロマンスの『ギフト』(最高位2位)等、チャートは20年前のアメリカンR&Bへのトリビュートとも言うべき様相を呈していた。

現在のK-pop市場において、アメリカのR&B系ソングライターは引く手数多となっている。キース・スウェット、ガイ、ブラックストリート等のプロデュースで知られるシンガーソングライターのテディ・ライリーは、その草分け的存在だ。2009年に韓国のシーンに目をつけた彼は、少女時代やジェイ・パーク等を世に送り出し、自身が生みだしたニュー・ジャック・スウィングのスタイルを現代に甦らせた。かつてマリオ、トニ・ブラクストン、ジャスティン・ティンバーレイク等への楽曲提供で知られたハーヴィ・メイソン・ジュニアもまた、K-pop市場への早期進出を果たした1人であり、最近ではBOA、シャイニー、東方神起、エクソ等に曲を提供している。



Translated by Masaaki Yoshida

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