サブライムのセルフタイトルアルバムが色褪せない理由

サブライムのエリック・ウィルソン(左)、バド・ゴウ(右)がフロントマン、ブラッドリー・ノウェル(中央)を失い、代表作をリリースした年を振り返る。(Photo by Steve Eichner/WireImage)

いよいよ今週末に開催される『GREENROOM FESTIVAL 18』。横浜・赤レンガ地区で、2018年5月26日(土)と27日(日)の2日間開催される、サーフカルチャーを愛する者たちが集うアート・ミュージックフェスティバルだ。二日目の大トリは、パンク、レゲエ、スカ、ヒップホップなどを取り入れた独特のサウンドで90年代の西海岸を席巻したサブライム。ここでは、バンドメンバーのエリックとバド、そして妻のトロイが、フロントマンのブラッドリー・ノウェルの死を振り返った2016年の記事をお届けする。

※本記事は、2016年7月28日のローリングストーン誌の翻訳記事です。

当時、ノウェルのバンド、サブライムは地元ロングビーチと南カリフォルニア界隈で熱狂的なフォロワーを持っていた。インディーズでリリースした2枚のレコードが支持されていたのである。そして、バンドは3枚目のセルフタイトルLPでメジャーに打って出たのだった。1996年7月30日にリリースされたアルバム『Sublime(サブライム)』にはノウェルが作った見事なサマータイム・ソングが詰まっていた。アップビートなフック。パンクロックのエネルギー。それらがバド・ゴウのドラムとエリック・ウィルソンのベースが奏でるダンサブルなレゲエ・ビートに支えられて完璧な組み合わせとなっていた。キャンピング、バーベキュー、ドラッグ常習者の集まりなどで、その先も永遠に流されるBGMとなる運命を持ったレコードだった。

このとき、誰かの家の裏庭で行われるパーティーでプレイし、バンを運転しながら国内ツアーを行ってきたド根性ベテラン・バンド・サブライムは、メジャー・レーベルの後ろ盾を持って活動できる機会を初めて得た。

結局、アルバム『Sublime(サブライム)』は5百万枚を売り上げ、リリース後の約20年間でクラシック・ロック専門ラジオ局が必ずかける定番曲を多数生み出すこととなった。しかし、バンドのボーカル・ギターのノウェルはそういった成功を一つも目にすることなく、1996年5月25日、米サンフランシスコでヘロインの過剰摂取によって死亡した。そう、このアルバムのリリース前に彼は亡くなっていたのだ。たった1週間前に結婚したトロイと生まれて間もない子供を残して。

ノウェルの未亡人トロイは、自宅でギターを弾いて歌いながら曲作りをしていたブラッドリーの姿や、彼の音楽への強い愛情をよく思い出すという。

「そうね、ブラッドリーは本当に優しかった。それが一番の思い出ね。本当に優しくて、思いやりにあふれていたの。ロックスターなんて部分はまったくなくて、純粋な人だったわ」と、トロイがローリングストーン誌に語った。

彼との良い思い出であっても、悪魔との闘いに負けた彼をそばで見ていた当時の痛みが、今もつきまとうとトロイはいう。アルバムの曲作りとレコーディング中に薬物を使用していた彼ではあるが、息子ジェイコブが誕生したこと、このアルバムがサブライムを次の段階の成功へと導く作品になる予感など、祝杯をあげるような出来事もあった。とにかくクールな音楽を作りたい一心だったのさ」ーグッドマン
実際、アルバム『Sublime』のあちこちにそういう対極にある二面性が見え隠れする。活発で、陽気で、ハイな雰囲気の曲調であっても歌詞のダークさは隠しきれない。「サンチョに一発お見舞いするぜ、そしてあの女を殴り倒してやる」と、ノウェルは「Santeria」で歌っている。恋人を寝取った男を殺すという分かりやすい歌詞だ。それ以外でも、ロドニー・キングの暴動の最中に酒屋や楽器屋に盗みに入った話(「この話は実話だよ」とノウェルの長年の友人でコラボレーターだったマイケル・“ミゲル”・ハッポルドが教えてくれた)、家庭内暴力から逃げてきた未成年の売春婦と知り合った話などを歌っている。

いくつかの曲はノウェルの実生活から生まれたものだ。彼が育った崩壊した家庭環境、ツアー三昧の無名ミュージシャンの葛藤など。しかし、ヘロイン中毒も含め、彼はそういうダークサイドを一切口外しなかった。トロイが説明してくれた。「自分以外は理解できないと私たちに隠したけど、そのせいで彼は孤立し、深い孤独を感じるようになったの。でも最後の方では彼もやめたがっていた。彼はいつも病んでいて、病んでいることにうんざりしていて、疲れ果てていたわ。そして、(『Pool Shark』の)歌詞の“いつか俺はこの戦いに負ける”のようになってしまった。あの歌詞は予言みたいだった」と。

Translated by Miki Nakayama

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