パッション・ピットのデビュー・アルバムは、マイケル・アンジェラコスが見かけ倒しではないということの証明だ。ダンスフロアを意識した輝けるシンセ・ポップ。それは、80年代のキーボード・サウンドと最近のシャッター・ビートの薫りを放つ、バラの花束のようでもある。アンジェラコスは、ホーン、ストリング・セクション、はたまた小学生の合唱団を駆使し、その手腕を存分に発揮している。だがこのレコードを印象づけているのは、彼の作り出す自由なビート、臆面もないフルーティなメロディ、息切れした少年のごときヴォーカルで、そのすべてが空へ向けて放たれているかのようだ。「アイズ・アズ・キャンドルズ」ではアバのような甘いヴォーカルが、「スウィミング・イン・ザ・フラッド」ではフィル・コリンズのバラードのような切なさが。幸福ホルモンを放出しっぱなしなのには辟易するが、魅力的にひねくれた歌詞が、それらを埋め合わせしている。アンジェラコスは、まるでディスコ・ディーバのように、悲しみと音楽的エクスタシーが一緒になると素晴らしいことを理解している。“かわいそうな僕の歌/きみの芝生の上で舞っている”と、まるで窓の下で跪いているかのように懇願している。OK、もう僕たちは窓の下に行くとこだよ!

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