ボブ・ディランの新しいボックスセット『ライヴ1966(原題:The 1966 Live Recordings)』は2016年11月11日に店頭に並ぶ予定だが、ディランのスタッフは既に次のアーカイヴのリリースを模索している。ディランは、ブートレッグ・シリーズの第13弾は、1979年〜1981年のゴスペル傾倒時代のボックスセットにしたいと熱望している。ボックスセットのもうひとつの有力候補は、アルバム『血の轍(原題:Blood on the Tracks)』レコーディング時のセッション(1974年)である。
このアルバムはビルボード・アルバム・チャートの第3位に入り、広く好評価を得た。しかし1979年9月に始まったツアーでディランは、ゴスペル以外の曲を1曲も演奏しなかった。そしてほぼ毎晩のようにオーディエンスに向かって説教を行った。1980年5月15日、ピッツバーグのスタンレーシアターでのライヴ中、「イエス・キリストについて話そうとする人間はそう多くないだろう」とオーディエンスに語り始めた。「ジャクソン・ブラウンは違う。彼は孤独なランナー(running on empty)だ。ブルース・スプリングスティーンも違う。彼は明日なき暴走(born to run)を続けている。ボブ・シーガーは、風に逆らって走り続けている(against the wind)。誰かがやらなきゃいけない。誰かが、"みんな自由だ!"と言わなきゃいけない。イエス・キリストが身代わりとなってくれたおかげで、俺たちは自由なんだ!」
『スロー・トレイン・カミング』に続いて1980年、『セイヴド(原題:Saved)』をリリースしたが、これも宗教に影響を受けた曲が収録された。その年もゴスペル・オンリーのライヴが続いた。所が1981年の『ショット・オブ・ラブ(原題:Shot of Love)』は宗教曲と宗教とは関係のない曲とがミックスされ、その後のツアーでは多くのゴスペル曲と同時に60年代のヒット曲も演奏した。「1981年のライヴはすべて本格的にレコーディングされた」と情報源は明かす。「さらに未公開のビデオも多く残されている。YouTube上に公開されているビデオとは違って、想像を超えたもっと興味深いステージ上の映像が存在する。それがまさにリリースされようとしている」。