心の問題を抱える10代のために…ドレイクやラマーも認めたジョルジャ・スミスの横顔

英マーキュリー賞にノミネートされたジョルジャ・スミス(Photo by Rashid Babiker)

21歳の元スタバのバリスタが音楽批評家も認めるソウルシンガーへ。サマーソニックにも出演する彼女の次の目標は「リアーナに会うこと」だという。

ジョルジャ・スミスは、コンサートをちょうど終えたところだった。シカゴの1300人収容のタリアホール、チケットはソールドアウト。だが、彼女にはまだ最後の仕事が残っていた。ロンドン出身の21歳がバックステージの椅子に腰かけると、ヘアメイクが現れ、彼女の髪を細い三つ編みに結い始めた。毎日8時間、編んではほどいての繰り返し。「でも、時間かける価値はあるのよ!」と、椅子に深々と腰かけて、これから編み込まれる地毛とエクステンションを手にしながら、スミスは微笑んだ。

彼女にとって、この手の時間は少しも苦ではない。この10年、この瞬間のために努力を重ねてきたのだから。先月リリースされたデビューアルバム『ロスト・アンド・ファウンド』は、魅惑的なヒップホップ・ソウルの親密感と鳥肌もののヴォーカルで、音楽評論家から大絶賛されている。イギリスの権威ある賞、マーキュリー賞で、アークティック・モンキーズやフローレンス・アンド・ザ・マシーン、リリー・アレンらと並んでノミネートされた。

ドレイクも魅了されたファンの一人で、彼女の控え目でうっとりするヒット曲「Blue Lights」を耳にするや、さっそくTwitterでダイレクトメールを送り、2017年のミックステープ『モア・ライフ』の中の2曲で彼女を起用した。それからほどなくケンドリック・ラマーからも声がかかり、彼の『ブラックパンサー ザ・アルバム』の1曲「アイ・アム」を共同制作し、声も披露している。ラマーから仕事のオファーがあったときは、スミス自身もしばし驚いたそうだ。「私が知らないと思って、Instagramでからかってるんじゃないの?ってね」と、スミスはにっこり笑った。

ロンドンから3時間ほどの小さな町ウォルソールで、彼女は音楽に囲まれて育った。ジャマイカ出身の父は、ネオソウルバンド2nd Naichaのリードヴォーカルを務め、カーティス・メイフィールドやマイケル・ジャクソン、ダミアン・マーリーらのヒット曲を演奏していた。11歳になるまでには既に自ら作曲を始め、力強い歌声でクラスメイトや家族を驚かせた。本人曰く、父はかなり手厳しかったそうだ。「父からは、『ここのコーラスが聴こえない』って言われたものよ。父はいつも客観的で、容赦ないの」

Translated by Akiko Kato

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