RYUJI IMAICHIライブレポ:音楽と人に「感謝」を捧げた濃密な空間

「ようこそ、初めてのソロアリーナツアー『LIGHT>DARKNESS』へ。あらためまして、今市隆二です。(中略)ソロプロジェクトをスタートしたときから、ソロツアーがゴールの一つだったので、今こうして皆さんと最高の時間を共有できていることが本当に幸せです。ありがとうございます」と、この日初めてのMCを行った後は、アコースティックセットのコーナーへ。バンドメンバーたちとともに、花道の先にある小さなステージへと移る。

そこで披露されたのは、なんと伝説的ファンク/ソウルバンド、アイズレー・ブラザーズの「Between the Sheets」(1983年)のボサノバ・カバーだ。ヒップホップのサンプリングソースとしてもお馴染みであり、ブラック・ミュージック好きの間では知らぬ人のいない名曲中の名曲である。原曲の持つ儚いまでのメロウネスを、今市らしいソフトなアプローチで表現する真摯なカバー。演奏後、同曲は今市が敬愛する先輩から、数多くのブラック・ミュージックを教えてもらう中で知ったもので、仲間同士のパーティで披露したこともある思い出の楽曲であることを語る。自分のファンである若いリスナーにも、古き良き名曲を伝えていこうとする姿勢には、一人の音楽ファンとしても打たれるものがある。

続く「Cracks Of My Broken Heart」は、90年代より活躍するR&B/ネオ・ソウルの巨匠エリック・ベネイのアルバム『Hurricane』(2005年)からのカバー。この年代のアメリカのR&Bは、今市がもっとも影響を受けたと公言しているもので、その選曲にも愛情が感じられる。いまの日本の音楽シーンの中で、こうした楽曲をこれだけの観客の前で披露できる男性R&Bシンガーは、今市の他にいないかもしれない。その意味でも、大きな意義のあるカバーだったのではないだろうか。

さらに、センターステージに戻った今市は、徳永英明の名曲「レイニーブルー」をカバーしてみせる。この曲は、彼がLDHのオーディションを受ける際に、第一次審査で歌ったもので、言うなれば三代目 J SOUL BROTHERSに加入するきっかけとなった楽曲だ。楽曲そのものへの静かで深い感謝が伝わってくるような、敬虔ささえ感じさせるカバーであり、そのような精神性が今市の音楽家としての個性につながっているのだと実感させられる。


Courtesy of rhythm zone

ピアノの弾き語りとともに披露された「夜明け前」は、三代目 J SOUL BROTHERSの代表曲「R.Y.U.S.E.I.」の制作も手がけたトラックメイカー・STYからの提供曲で、こちらも今市にとって思い入れが深い楽曲だ。夜明け前ーーそう、アコースティックな編成を中心に届けられたこれらの楽曲は、今市のパーソナリティーに根ざした楽曲であり、彼がまだ日の目を見る前に、その音楽性を十分に養った楽曲でもあるのだ。

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