2018年全米トップ100曲のうち、女性が作ったのは僅か17%という歪んだ現実

スミスと、USCの研究員で同報告書の共同執筆者のキャサリン・パイパーが、今年の報告書で目指したことは、音楽業界の女性比率の歪んだ実数を示すだけでなく、音楽業界で成功している女性たちが実際に直面している出来事をあぶり出すことだったと言う。「業界の女性たちは、自分たちの実力が過小評価されていると話しています」と、パイパーはローリングストーン誌に述べた。「彼女たちは性の対象として扱われることが多く、スタジオではモノ扱いされる。紅一点なので隔離されることも多い。このような現実が彼女たちから機会を奪っている上に、彼女たちが働く現場は、無視されたり、返事されなかったりということから始まり、最悪の場合は身の危険を感じる環境なのです」と説明してくれた。

この状況を正す手立てはあるのだろうか? この報告書では同性アーティストたちが最も影響を与えやすいと述べている。調査対象の700曲のうち、男性アーティストが一人以上の女性ソングライターと組んで作った楽曲は約7%だが、14%の楽曲は女性アーティストが女性ソングライターと共に作っている。これを鑑みると、音楽を演奏する女性たちがスタジオに一緒にいる女性の大きな助けとなることが明白だ。同報告書の執筆者たちは、来年は女性マネージャー、女性A&R重役などの聞き取り調査を加えて報告書を充実させ、ジェンダーの平等を根本から育成する必要への理解をもっと深める予定だと言う。

来年の数字に関してスミスは、レコーディング・アカデミー主導で行われているグラミー賞でのジェンダー平等活動によって一般的な音楽制作現場の状況がどのように変化し、どのような結果を生むのか興味津々だという。「組織的な介入のある場所では明らかに変化してきています。グラミー賞は(女性の)ノミネート数を増やすという行動によって変化を生んでいるので、来年の数字が楽しみでもあります」と話していた。

今年の報告書に記載されている明るい兆しの一つは、チャートに入った女性アーティストたちの73%が、話題として取り上げられることの少ない人種や文化的背景を持つ人たちということだ。そして、今回分析された男女合わせて1455人のアーティストのうち、44%がマイノリティという点も前向きな兆候と言えるだろう。

Translated by Miki Nakayama

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