ジョン・スペンサーが2月に東京と大阪で来日公演を行った。90年代を中心に大きな人気を博したジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン(以下、JSBX)ではなくソロでの公演となったが、筆者が足を運んだ恵比寿リキッドルームには気合いの入ったロックファンが多く詰めかけ、約1時間のショウに熱狂した。
30年以上のキャリアを誇るジョン・スペンサーにとって初となるソロアルバム『スペンサー・シングス・ザ・ヒット』は、Quasiのサム・クームズらを迎えて制作された徹頭徹尾ロックンロールな作品。とは言え、過去の焼き直しではなく、硬質なメタル・パーカッションやブリーピーなシンセが鳴り響く、ジョン・スペンサーらしい危うさが全編に漂う刺激的な内容になっている。
今回のインタビューは、JSBXが再評価されるきっかけとなった映画『ベイビー・ドライバー』、JSBXとヒップホップのつながり、ストリーミングサービスの普及がもたらしたライブ会場での珍事など、“今改めて理解するジョン・スペンサー”を裏テーマにした内容になっている。
インタビューの最後、苦し紛れに「今作は今、あなたのやりたいことすべてが詰まっている作品ということですよね?」という非常に愚かな質問をしてしまったが、彼は「もちろん!」と即答したあと、愉快げな笑みを浮かべてこう付け足した。「厳密には、“2018年にやりたかったこと”、だけどね」と。それは、今後も己を更新し、爆走し続けるというジョンの軽やかな宣言だったのだ。
―映画『ベイビー・ドライバー』のオープニングシーンで使われたことをきっかけにJSBXの「ベルボトムズ」に再びスポットが当たっていますが、この状況についてどう感じていますか?
あの映画のおかげでいろんな人が改めてJSBXに興味を持ってくれたのはすごく幸せなことだね。映画のあのシーンはファンタスティックで信じられないようなものだったし、個人的には俺が歌っているのに合わせて俳優がリップシンクしてる姿がすごくリアルだった。『ベイビー・ドライバー』の監督、エドガー・ライトはとてもいい人で、彼は才能のある映画監督っていうだけでなく、JSBXや様々な音楽の真のファンなんだ。これも素晴らしいことだよね。でも、JSBXはもうコンサートをやらないから、ツアーには出られないんだ。
―え、それはもうJSBXは活動していないということですか?
していないね。
―驚きました。それは残念です。
そうだね。エドガー・ライトは1994年に「ベルボトムズ」を聴いたときに『ベイビー・ドライバー』のアイデアが浮かんで、それを20年も温め続けたんだよ。それで2005年に初めて彼に会ったときに、「映画のアイデアがあるからあの曲を使いたいんだ。いいですか?」って聞かれたんだ。それでのちに『ベイビー・ドライバー』が公開されたわけだけど、彼はただ曲を使っただけではなく、JSBXのことをいろんな場所でたくさん話してくれた。それがきっかけでいろんな人が俺にJSBXのことを聞いてくるようになったんだけど、悲しいことに「次の木曜にセントルイスでコンサートをやるよ」みたいな返事をすることはもうできないんだよ。