凄惨な殺人事現場専門の不動産鑑定者が語る、難あり物件のあれこれ

“一般的に言って、犯罪現場が博物館になったり観光名所に化けたりすることはないだろう。私が常に心がけているのは、損傷の程度を軽減することだ。”

ーそのような悪魔崇拝者たちは、どのような住宅に魅力を感じるのでしょうか?

さまざまだ。私が関わったある物件では、多くの悪魔的儀式が行われていたようだ。集団殺人があったとされる家だが、電話をもらうまで私はその家の存在を知らなかった。

ーどのような物件の取り扱いの依頼を受けることが多いでしょうか。

最も奇妙な案件はヘヴンズ・ゲートで、あらゆるレベルでとても異様だった。指導者のドウは人を魅了する洗脳テクニックを使用し、信者をコントロールするために家を装飾していたが、このことはメディアにほとんど知られていない。とにかく異様だった。彼がとても聡明で頭も良い人々を、新しい魔法の世界の言葉でそそのかしたやり方の全てが、家中のあちこちに見られた。信者が一旦その家に入ってしまうと、彼に思考の全てをコントロールされてしまったのだ。実際、ある女性記者と共に家の中を歩いて回ると、全ての物にラベルが貼られているのに気づいた。大げさな話ではなく、全ての照明のスイッチ、全ての箪笥、全ての食器棚、全ての棚、全ての壺など目につく全ての物にラベルが貼られていたのだ。彼女いわく「信者の考える必要性を指導者が奪ってしまおうとしたからだ」という。日常の些細なことですら、自分で考える必要がないようにしていたのだ。

指導者はまた、煙突から文字通りワイヤを張り巡らし、家中のそこかしこを盗聴していた。信者はどこへも行けず、私的な会話もできなかった。折りたたみテーブルの上にコールセンターのように電話が並べられていたが、全ての電話は盗聴されていて、電話中は誰かほかの人間が会話をチェックしていた。指導者は信者のプライベートを奪い、自主的な行動やその動機づけも取り除いた。信者は単独でトイレにすら行けなかったのだ。このやり方で、本来は聡明であったはずの人々が、普通では考えられないようなことを信じ込んだ。指導者により巧妙なやり方だった。

ー扱った中で、ほとんど知られていない物件について紹介してください。

数週間前、1959年に医者が彼の妻を殺害したロスフェリスの有名な邸宅を訪れた。約60年間、誰も立ち入らなかった家の中に私は入り、写真撮影も許された。何十年間も立ち入れなかった禁断の家だということは知っていたため、それはすごいことだった。私が入れるかどうかは、誰も家の中に入れたくないという人々の手に委ねられていた。いかなる理由があれ、所有する家族が協議する問題だった。遺言が検認され、物件は子どもたちの手に渡ったが、相続人たちも同じ態度だった。美しい建築物だったが、明らかに何十年も無視されてきた。木枠に一枚ガラスの窓は、少し前の時代を感じさせる。私は参加しなかったが、一緒に入った人たちの行う降霊会を、私は見ていた。私にはとても奇妙な体験だった。

私は、夫が狂乱して妻を撃ち、さらに自分も銃で自殺するという、メディアにも取り上げられない物語について考えている。そのような物語が何度頭に浮かんだことか。しょっちゅう起きることだ。

そういえば、奇妙な話がある。南カリフォルニアのミッションビエホで、ある家族が家を買って引っ越した。家族の娘が自分の服をクローゼットへしまっている時、クローゼットの床に穴の空いているのを見つけた。父親を呼んで確認すると、案の定その穴は弾痕だった。天井にも弾痕を見つけ、弾道を辿って階下へ降りてみると、天井の湯沸かし器の裏側にかなりの血痕と飛び散った脳を発見した。家のガレージで男性が自殺した事実が家族に伝えられておらず、血や脳も清掃されていなかったのだ。家族はとても動揺し、私自身も確認したが、私も不安を感じた。家族は仲介業者と販売業者を訴えた。ニューヨーク州とカリフォルニア州では法的に、そのような事案を開示する義務がある。

ー超常現象を経験した物件について教えてください。以前あなたは超常現象を信じないとおっしゃっていましたが、その手の物件を鑑定した経験があると思います。

私は幽霊を見た経験はない。気味の悪いものを見たことはあるが、幽霊はない。ヘヴンズ・ゲートにまつわる奇妙な話がある。物件のオーナーは基本的に全てを私に任せてくれた。メディア向けに物件をツアーしたり、さまざまな人たちを連れて二段ベッドのあった場所などを案内したが、必ず最後に「どう思いますか? 問題ありませんでしたか?」と尋ねた。ナーバスになったり、気味悪く感じる人も多かったが、皆口々に「問題なかったが、ある部屋だけ気持ち悪かった」と言っていた。誰もが同じ部屋を指してコメントしたのだ。私はそれらコメントを自分の中だけに留めていたが、その部屋というのは、2組の二段ベッドに4人の遺体が発見された場所だった。部屋の中に血痕なども残っていなかった上に、建物内の各部屋には全部で39人の遺体があり、ある部屋だけが特別だった訳ではないが、案内した皆が同じ発言をしていた。

ーいわくつきの物件が取り壊されないのはなぜでしょう?

それは常に疑問だ。物件を取り壊してもいわくまでは壊せないからだ。いわくは、物件のあった土地につきまとう。例えば、メーガン法(性犯罪者情報の登録・公開を定めた法律)で知られる少女メーガン・カンカの家は取り壊され、現在は公園になっている。ジェフリー・ダーマーの家も壊され、私が2か月前に訪れた際はまだ空き地のままだった。全米各地にある南北戦争の史跡と似たようなものだ。戦地を訪れても、死体があったり大砲や剣が落ちている訳ではない。しかしその土地で起きたことは歴史上重要な出来事であり、畏敬の念を抱く人も多い。犯罪現場に対しても同様だ。いわくは土地につきまとう。建物を取り壊すことはできても、いわくを拭うことはできない。


ロサンゼルス州シエロドライブにあるマンソン・ファミリーによる殺人事件現場に新たに建てられた住宅(Photo credit: REX/Shutterstock)

Translated by Smokva Tokyo

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