ローリングストーン誌が発売当初に酷評した名アルバム10選

ウィーザー 『Pinkerton(ピンカートン)』(1996年)
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1996年のローリングストーン・クリティックポールにおいて『Pinkerton』は、同年のワーストアルバムの1枚にランクされた。ただ、ロブ・オコナーによるオリジナルのレビューはそう辛辣でもなかった。

ロブ・オコナーによるオリジナル:ウィーザーはクオモ(ヴォーカル)の全ての傷を癒やすキャッチーな曲に、極端に依存している。「El Scorcho(エル・スコルチョ)」の覚えやすいコーラスはあまり効果がなかった。悩める絶倫男の空虚なセックスライフを描いた「Tired of Sex」は、テーマとなっている毎晩のルーチンと同じように目的がわからない。しかし、ビッグ・スター(訳註:米国のロックバンド)の美しく感動的なビンテージ曲を思わせる上品なアコースティックナンバーの「Butterfly」は、真の癒やしだ。歌詞の中で思いがけず、か弱い生き物を殴る時、クオモの声はかすれる。マニアックなティーンエイジャーの態度の裏には、成熟へと向かうアーティストの姿がある。

ギャヴィン・エドワーズによる改訂版:5つ星『ローリングストーン・ホール・オブ・フェイム』(2004年)
バンドのデビューをプロデュースしたリック・オケイセックがもたらした輝きを排除したセルフプロデュースによる同アルバムは、クオモによる歌詞同様に生々しい。しかし、ピンカートンがブログの1記事程度に収まらず広く話題となったのは、クオモのパワーポップに対する尽きない才能のおかげだ。日本人からのファンレターの大半を引用した(クオモは彼女に作詞作曲収入の一部を支払った)「Across the Sea(アクロス・ザ・シー)」は、傑作だ。クオモが高値の花の女の子たちとの遠い距離を嘆くごとに、ますます強烈さを増す。最終的には「あなたは私に手紙を送ってくれた/私はあなたに歌を送る」と、コーラスが膨らます。これから実現するファンタジーは、誰でもワクワクする、とクオモは言う。彼は説得力のある情熱をもってファンタジーを歌うのだ。

Translated by Smokva Tokyo

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