旧東ドイツ出身のロックバンド、ラムシュタインが祖国の「今」を歌う理由

物議を醸したシングル曲「ドイチュラント」

ラムシュタインが祖国に関する楽曲を歌うときに警戒心を高める理由を、今さら説明するまでもないだろう。レニ・リーフェンシュタールの映画の一部をフィーチャーした「ストリプト」(デペッシュ・モードのカバー曲)のMVが1998年に公開されたあと、激しく中傷された経緯を知れば十分だろう。そして1994年以来、どんどん巻き舌度合いの増すティル・リンデマンの「R発音」を聞けば分かるはずだ。全体主義的アートと破滅の肯定によって起こる問題が再び頭をもたげる。



ラムシュタインが活動を始めた90年代半ばは政治に対する怒りが爆発していた時期で、彼らのレコード会社「モーター・ミュージック」が確固とした反ネオナチ姿勢を表明するために、CDの裏ジャケットに卍にバツをつけたマークを印刷するように指示したと言われている。ラムシュタインはそんなことはしたくなかった。自分とは無関係のことで、なんの理由もなく謝罪する必要があるのか? 現在ですら、反ナチキャンペーンでそこそこの有名人がカメラの前で安っぽいポーズを決めたところで、苦情はほとんどない。ラムシュタインがそれと反対のことをしたとしても、誰も彼らを責められないのだ。

「ドイチュラント」は彼らの考えを公表するものだ。東ドイツ出身のバンドが、長い間シーンから姿を消したあとで復活した現在、彼らは一体何を見ているのかという問いに対する答えである。

いま彼らの視野に入るのは、警察の保護下でネオナチが旗を持って行進している国の姿であり、ユダヤ人が再び生命を脅かされる現実であり、心ない声明が出された直後に撤回される事実である。つまり、2019年のドイツはラムシュタインが活動を始めて以来、これ以上ないほど様々な問題をはらんでいるのだ。


ラムシュタインのギター、リヒャルト・Z・クルスペ(Photo by JENS KOCH)

ドラマーのシュナイダーは次にように述べる。「内容と独創面についてはいろんな意見があっていい。でも、一つだけ明らかなのはこの曲で人々の神経を逆撫でしたことで、そのおかげで多くの人にアピールし、感動させる状況になった。この曲はアルバムと切り離して考える方がいいと思う。アルバムのタイトルが『ドイチュラント』じゃなくて安心しているよ」と。

Translated by Miki Nakayama

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