シンディ・ローパー独占取材 日本との固く結ばれた絆、今を生きる女性へのメッセージ

ーあなたは日本を何度も訪れていて、2011年の東日本大震災の際に日本にいたことで知られていますが。

シンディ:それより前、95年の阪神大震災のときもショックだった。ビリー・ジョエルがそのとき大阪にいたのよ。私は曲のメッセージを送ったんだけど。私にとって日本は、最初からエキゾチックな場所で、いまでもエキゾチックなものを感じる。とても美しい国よね。

ー何かいまも強く印象に残ってることってありますか?

シンディ:やっぱり、初来日ね。ライブで「トゥルー・カラーズ」を歌いはじめたら、観客がみんな英語で一緒に歌ってくれたのに、すごく感動した。日本のアクセントがあるのもわかったんだけど、私自身ずーっと訛りが取れないから(笑)、人の訛りって好きなのよ。あと日本に行くと、いつも美しいデザインが目に入ってくる。すべてのプレゼンテーションが優れてて。時間ができると、あちこち歩き回るのが好きなの。



ーデビュー時から「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」を歌っていたあなたから、いま日本の女性や女の子たちに伝えたいことって何かありますか? フェミニズムが広がるとともに、日本の社会では新たなバックラッシュも起きているように思います。

シンディ:とにかく、自分のストーリーを語ることが大切。それと、人を支えることね。シスターフッドっていうのはとてもパワフルだから。私はずっと、自分の権利のためには立ち上がらないといけないと思ってきた。そして一人のためになることは、必ず集団のためにもなるのよ。だからこそ、私はつねに平等を支持してきた。すべての人の平等をね。一部じゃなくて。「自由な社会なんて当然じゃないか、例外はあるかもしれないけど」みたいなトリッキーな物言いって、いつだってあるの。で、その例外にあたる人たちだけが、さらなる努力を強いられたりする。それに実際、もうこの世界は男だけのものじゃない。社会を維持するには両方のジェンダーが必要なのよ。全員の力が必要。どこからいいアイデアが出てくるかなんて予想できないでしょ? もし「つねに優れたアイデアは男から生まれてくる」なんて信じてるなら、それは可能性を半減させてるのと同じ。そして女性は、他の女性をサポートすることを心に留めておかないと。だから……そうね、私から日本の女性へのメッセージは、「キック・アス!」ってことかな。なんだかんだ無視して、やっつけちゃえばいいのよ(笑)。



ー(笑)。最近、『ボヘミアン・ラプソディ』とか『ロケットマン』みたいな映画を見てて、女性シンガーやアーティストの伝記ものも作ればいいのに、って思ったんですよ。70年代でも80年代でも、すごくカラフルな女性たちがいたのに、って。

シンディ:そう、クイーンって70年代からいたんだけど、バンドとして寿命が長かったのよね。エルトン・ジョンも70年代からずっと長いキャリアを保ってる。女性アーティストで70年代から息の長いキャリアを持ってる人と言えば……シェールとか? でも彼女は、男性アーティストよりさらに多様性を押し出したと思う。あんなふうに多様性を打ち出したのは、彼女が最初だったでしょう。音楽だけじゃなくて、演技もやった。コメディもテレビもやったし、一つの枠にはまらず、どんどん領域を広げていって。私にとっては、違うものの見方をしたり、多様性を理解するのに彼女の存在が助けになったの。世の中には門番みたいな存在がたくさんあるのよ。人が自由に何処かに行こうとすると、それが止めようとする。だから、門番の裏をかかなきゃ(笑)。でないと決まりきったものに当てはめられてしまう。それって性差別だけじゃなくて、年齢差別もあると思う。「この年齢だとこうするのがふさわしい、この年代になったらこれ」みたいに決めつけられるのよね。でも、そんなの嘘! それよりも、自分がどう感じるかが大事。そうね、私だったら、シェールの映画が見たいかも。

ーごめんなさい、私の質問は、「もしシンディ・ローパーの伝記映画が作られるとしたら、誰が主演で、どんな映画?」だったんですが(笑)。

シンディ:(笑)わかんない! 自分のことをそんなふうに考えたことないから……いつも次は何をしよう、それに対して自分は何をクリエイトできるか、どんな変化を生めるか、って私は考えてる。世界を良くするために何を貢献できるだろう、って。無駄にできる時間なんてないのよ、いつも。私は、いいさざ波を生みたい。だから……人生を振り返るなんて、無理(笑)。だいたい、その映画、どこから始めるの? 子どもの頃、初めて女性のためのデモに参加したところから? 私はそういう時代に育った。ジャニス・ジョプリンやグレイス・スリック、ものすごく面白い女性たちがいて。いつも、ジャニス・ジョプリンみたいな人がいまの時代に生きてたらどう思うだろう、って考えるの。世界が変わるなら、いい方向に変わってほしいから。閉じられた狭い方向に進んで、恐怖がはびこって、人々がお互いに意地悪くなるんじゃなくて。義理の父がよく言ってたのよ、「人間に非人間的なことをするのは、人間だ」って。

とにかく……映画の話ね(笑)。誰が私を演じるか? 一つ言えるのは、アルバム『ハットフル・オブ・スターズ』(1993年)で「サリーズ・ピジョンズ」っていう曲を書いて、ビデオを自分で監督したときには、ジュリア・スタイルズが若い頃の私を演じた。12歳の頃の私にちょっと似てるな、と思ったから。ジュリアにとって初めての仕事だったはず。でも、私には本に書けるようなライフ・ストーリーもないし……。

ーあなたのメモワール(『トゥルー・カラーズ シンディ・ローパー自伝』)があるじゃないですか!

シンディ:あれはその時々に何が起きてたかを当時書いただけ。私の人生を物語にするには、また別の本を書かなきゃいけないと思う(笑)。でも、いまは時間がないな。『ワーキング・ガール』のミュージカルを書いてるところだから。で、ちょっと書いては、止まって。舞台を形にするのって、ほんと時間がかかるの。アルバムよりずっと。あ、それともうすぐ、キャット・ダイソンと仕事をするの。それはすごく楽しみ。彼女とは90年代に一緒にやったんだけど、その後ずっと機会がなかったから。

ーキャット・ダイソンはプリンスとも仕事をしていたギタリストですよね。『ワーキング・ウーマン』も80年代を代表するような映画だったので、ミュージカルになるのはワクワクします。どんどんいろんなプロジェクトが広がりつつあるのを聞いて、来月のツアーが一層楽しみになりました。

シンディ:今回のツアーも私のキャリアと新しいもの、新曲のコンビネーションになると思う。私がいまやっていることとも関わりながら、これまでのセレブレーションでもあるのよ。





<来日公演情報>



シンディ・ローパー デビュー35周年Anniversary Tour

【仙台】10月8日(火)仙台サンプラザホール
【東京】10月10日(木)・11日(金)Bunkamuraオーチャードホール ※SOLD OUT  
【名古屋】10月15日(火)名古屋市公会堂 ※SOUD OUT
【金沢】10月18日(金)本多の森ホール   
【広島】10月21日(月)広島上野学園ホール
【大阪】10月23日(水)グランキューブ大阪 ※SOLD OUT
【東京追加】10月25日(金)Bunkamuraオーチャードホール ※SOLD OUT

詳細:https://udo.jp/concert/CyndiLauper


<リリース情報>

JAPANESE SINGLES COLLECTION 表1.jpg

シンディ・ローパー
『ジャパニーズ・シングル・コレクション -グレイテスト・ヒッツ-』
発売日:2019年8月28日(水)
2枚組 CD+DVD SICP31238~31239
特別価格¥3,000+税
・高品質Blu-S-pecCD2仕様×全曲2019年デジタル・リマスター(DISC1)
※最新曲「HOPE」を世界初CD化で追加収録
・シンディがEPIC期に発表した全てのミュージック・ビデオを収録(DISC2) 
※最新曲「HOPE」含む全26曲収録。10曲が世界初DVD化
・カラー56Pブックレット
・当時の日本盤全シングル・ジャケット(ドーナツ盤/一部8cmCD盤)を12cmCDジャケット・サイズで復刻再現して掲載
・歌詞・対訳・解説付

詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/CyndiLauper/discography/SICP-31238


『シーズ・ソー・アンユージュアル』
日本限定オレンジ・カラーヴァイナル盤
(輸入盤/日本語帯付)
1907598382-1 オープンプライス
2019年9月27日発売

アメリカだけで600万枚、全世界で1600万枚以上(当時)という驚異的なセールスを記録した、ポップス史に残る屈指の名盤が、デビュー35周年を記念して、日本限定カラーのオレンジ・ヴァイナルで登場。

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