Gラヴはなぜキャリア25年を経て、新境地を切り拓くことができたのか?

そして、新境地と言えば、もう1つ。それは「ドナルド・トランプとその政権に対するプロテスト・ソングなんだ」と語る「ザ・ジュース」をはじめ、ニュースを見るのが好きだというGラヴが日々の暮らしの中で感じる危機意識に基づいて、ぐぐぐっと現代の社会にアプローチしながらメッセージを訴えかけているところだ。

「「ザ・ジュース」が重要なのは、これが俺たちの国、そして世界中の愛と結束のメッセージだからだ。そして、環境を保護したり、女性の権利のため、参政権のため、そして貧しい人々や移民のために戦ったりしたりしている人々を力づけることができるからなんだ。この曲には目的がある、と俺は感じている。今、ライブで最も重要なのは、この曲を歌うこと。俺に目的を与えてくれる気がするんだ。アルバムの他の曲もそうだけど、特にこの曲がそうなんだ。俺にとって、とても大切な曲だから、長いこと歌い続けていくことになると思う。率先して、率直な意見を述べて、自分が信じているもののために立ち向かうべきだと思うんだ。自分では立ち向かえない人達のために立ち向かうんだよ。だから、使命があるという気が俺はしている。今、アーティストとして、僕の友達の多くはどっち側も怒らせるようなことを何も言いたがらない。コンサートのチケットが売れなくなるのがいやだからだし、InstagramやFacebookのフォロワー数を減らしたくないからだ。つまり、正しいことのために立ち向かう勇気がないんだよ。でも、革命を代表するのは常にアーティストの仕事だと俺は思ってきた。今回の場合は、正しい道から逸れないようにすることだな。価値とか、寛容とか、科学とか、男女平等とか。アーティストとして、そういったことに、さらに力を入れるのは、今、とても大事なことだと思う」



長々と彼の発言を引用したが、もちろん、今回のアルバムが政治一色というわけではない。「ザ・ジュース」のようなプロテスト・ソングが、口角泡を飛ばしてとか、舌鋒鋭くとかならずにレイドバックしたラップというところがいかにもGラヴらしいが、シリアスなメッセージを訴えかけながら、愛する人とのセックスや友達と楽しむパーティーについても歌っているところは、まさにGラヴ。彼にとって、世界を憂うることは、愛する人とのセックスや、友達と酒を酌み交わすことと何ら変わらないのだろう。

「このアルバムには2つの面がある。1つは俺たちが住んでいるこの世界に対する俺の気持ちと、もう1つは俺たちの家庭生活の、とてもパーソナルな部分。それはとてもいいことだ。いろいろなことがあったんだもの。俺は昨年、結婚したし、都会から田舎の海辺(マサチューセッツ州ケープ・コッド)に引っ越したし。3歳の子供がいて、もうすぐ赤ん坊が生まれるんだ。俺のプライベートはとても充実している。それも今回のアルバムで祝いたかった。(カントリーっぽいところもあるポップ・ナンバーの)「シーズ・ザ・ロック」っていう曲は妻のために書いたんだ。俺のプライベートは幸せでいっぱいだから、それがアルバムにも出ているんだよ」

友達と言えば、「ザ・ジュース」にブルージーなギターを加えているマーカス・キングをはじめ、今回のアルバムには多くの友人たちが参加している。マーカス・キングは現在のサザン・ロックの雄と謳われるサウス・カロライナの6人組、マーカス・キング・バンドの若きリーダー/ギタリスト/シンガーだ。


マーカス・キングも今年1月にソロ・デビューアルバム『El Dorado』を発表したばかり

ファンクとゴスペルの要素を加え、ラグモップをアップデイトした「ソウル・B・キュー」でスティール・ギターを演奏しているルーズベルト・コーリアーは、マイアミ出身の若手スティール・ギター奏者。セイクリッド・スティール(スティール・ギターで演奏する教会音楽)からキャリアをスタートさせたのち、ブルース/ソウル/ファンク/ジャズが交差するシーンでめきめきと頭角を現してきた。サーフ・ロックとも言えるリラックスしたアコースティック・ナンバーの「ディギン・ルーツ」に参加しているロン・アーティスト・ザ・セカンドは、カルフォルニア生まれ、ハワイ育ちのシンガー・ソングライター。

そして、ファンキーなロックンロールの「バーミングハム」にケブ・モと参加しているロバート・ランドルフは、ルーズベルト・コーリアー同様、セイクリッド・スティールの出身だが、現在は、ファンクとソウルを演奏するロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンドのフロトマンとして活躍中。スティール・ギターのジミ・ヘンドリックスと謳われている。

「スペシャル・ゲストはみんな、収録した曲のレベルを上げてくれた。エキサイティングだったよ」とGラヴも友人たちの演奏には大満足。スタジオでゲストの演奏を聴きながら、相好を崩す彼の姿が目に浮かぶようだ。

「コラボレーションっていいことだと思うんだ。特に俺みたいに長年やっているアーティストだと、別のアーティストとコラボレーションによる相互交流はみんなのキャリアのためになると思う。俺はコラボレーションが好きだよ。とても大切なことなんだ」



ところで、Gラヴがサーフ・ミュージック界隈でも人気を集めるようになったきっかけは、その第一人者、ジャック・ジョンソンのペンによる「ロデオ・クラウンズ」を、Gラヴ&スペシャル・ソース名義の『フィラデルフォニック』(99年)で取り上げたのち、2004年からジャック・ジョンソンのレーベル、ブラッシュファイアーの所属になったことが何と言っても大きいと思うのだが、『ザ・ジュース』はそのブラッシュファイアーではなく、新たに設立した自前のレーベル、フィラデルフォニックからのリリースだ。ブラッシュファイアーがしばらくジャック・ジョンソン以外のアーティストの作品をリリースしないことになったため、それならと自前のレーベルを持つという長年の夢を叶えたということらしい。

そんなことも新境地を思わせるが、デビューから25年経ってもなお、Gラヴの活動意欲はこれっぽっちも衰えてはいない。いや、むしろアルバム・タイトルに倣って、ますます脂が乗ってきたと言うべきかもしれない。

彼はスペシャル・ソースとともに東京、大阪、名古屋を回るジャパン・ツアーを4月21日、22日、23日に行うことがすでに決まっている。前回の来日から4年ぶり。進境著しいGラヴの雄姿を、自分の目と耳で確かめる絶好の機会だ。見どころはいろいろあるが、スペシャル・ソース抜きで作った『ザ・ジュース』の曲が、ライブではどんなふうに再現されるのか気になるところ。アルバムとはまた違ったものになるに違いない。

「もちろん! 良くも悪くも、俺はアルバムを、ライブでそのまま再現することに興味はない。だから、個人的には、どうレコーディングされていようがあんまり関係ない。バッキング・ボーカルが入っていようが、ピアノが入っていようが、ライブでは俺は自分の曲をトリオかアコースティックでやりたいんだよ。ツアーではもちろん、昔のヒット曲もやるし、新曲もやる。そうすることによって、昔の曲も生きてくるしね。だから、『ザ・ジュース』の曲もスペシャル・ソースが独自の形で解釈するよ。ジムとジェフが曲をどう解釈するか、俺も楽しみにしているよ」

Gラヴは、すでにやる気満々だ!






Gラヴ
『ザ・ジュース』
2020年1月22日(水)発売
初回紙ジャケット仕様 / 初回のみポスター封入
国内盤ボーナス・トラック3曲収録
配信リンク:https://lnk.to/GLOVE_TheJuice
日本公式ページ:https://www.sonymusic.co.jp/artist/GLove/

Gラヴ&スペシャル・ソース
JAPAN TOUR 2020
2020年4月21日(火)東京・渋谷クラブクアトロ
2020年4月22日(水)⼤阪・梅⽥クラブクアトロ
2020年4月23日(木)名古屋・TOKUZO
料金:¥6,800(税込み・前売り・スタンディング/ドリンク代別途)
https://www.smash-jpn.com/live/?id=3329


Gラヴのカタログも併せてチェック

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE