URC50周年ベスト「愛と平和の歌」、避けて通れないテーマの歌



『URC 50th ベスト・青春の遺産』DISC2「旅と街の歌」15曲目、ザ・ディランⅡの「サーカスにはピエロが」。72年の1stアルバム『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』に入っておりました。作詞と作曲は西岡恭蔵さんですね。恭蔵さんのソロ・アルバム『ディランにて』にも入ってます。アルバムタイトル『きのうの思い出に別れをつげるんだもの』は、今聴いていただいている曲の一節から取られていますね。この曲が好きだったんですよ。いまでも好きですけどね。これを初めて聴いたときに、ビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」の日本語版だなと思って。峠で膝を抱えて座っているんですね。一緒に旅に出た君とまた旅に出るために、っていう情景がああ日本だなと思ったんです。この君というのは、来るんだろうか来ないんだろうか、そのへんがはっきりしていないですね。そのへんがまたいいなと。そういう淡々と、とっても飄々としているのが恭蔵さんの味ですね。さっきの三上寛さんは青森の曲でしたけど、この「サーカスにはピエロが」は、日本中の田舎のある風景、そういう街からどこか旅をしたいなと思っている人の誰でも共通する風景なんじゃないかと思います。そしてこの「旅と街の歌」、大詰めにさしかかっていますよ。16曲目、彼は旅に出ました。そして大阪にやってきました。



『URC 50th ベスト・青春の遺産』DISC2「旅と街の歌」16曲目、友部正人さんで「大阪へやって来た」。先週もお話したんですけど、あの頃と現在では旅の形がずいぶん違う。先週は夜汽車というのがわかりやすい例だなと言いましたけど、もう一つはこれですよ。ヒッチハイク。懐かしいですね。道路脇に立って手をあげて止まってくれた車に乗せてもらうんですね。無銭旅行です。友部さんはそうやって旅をしていたんですね。名古屋のストリートで歌っていて、ある日大阪にやってきた。10トントラックを止めたんでしょうね。観光地をまわるとか、そういうのじゃないんですよ。避難民のように流れていくというのが彼の表現ですね。今はどうなんでしょうね。危ないからやめろ。まずはそう言われるでしょう。乗るほうも運転手さんがどういう人かわからないのに、そんな危ないことはできない。乗せるほうも、乗っかってきた人が何者か分からないのに乗せられるか、と。そういう時代になりましたね。目的があるわけでも、予定があるわけでもない。でもそうやって流れていくというのが、当時の若者たちのある種ひとつの生き方だったと思うと、こういう歌も違って聴こえてくるんじゃないでしょうかね。友部正人さんはNYまで流れていってしまいました。

Rolling Stone Japan 編集部

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