大統領も盲信、漂白剤摂取の恐ろしい副作用

漂白剤摂取の危険性

ピーター・チャイ博士は、ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院の緊急医療部医療毒性学部門の助教授。博士曰く彼が診察した、漂白剤を注射した患者のほとんどが静脈点滴薬物乱用者で、ヘロインやメタフェタミンの使用後、漂白剤が血液から不純物を取り除いてくれるという都市伝説が原因だ。博士の話では、漂白剤を打つと極めて恐ろしい副作用があるという。

「漂白剤は腐蝕性物質です。酸性の反対、つまり弱アルカリ性です。物を分解する作用があり、それが掃除に効果的なのです」と博士。「ですから、静脈に注入しようとすれば、血液の中のものを分解してしまいます」。その結果溶血反応、つまり体内に酸素を運ぶ赤血球が分解され、臓器に酸素が行き渡らなくなってしまう現象が起きる。これは血栓や肝損傷、最も多いケースでは腎損傷や腎不全に繋がり、ひどい場合は症状が一生残り、透析が必要になることもあるという。

一般的には、漂白剤を注入するより口から摂取してしまった患者の方が多い。大抵は小さな子供が誤飲したか(事実、チャイ博士の話ではパンデミック中に中毒センターへの問い合わせが増加しており、清掃用品を置きっぱなしにした保護者が慌てて電話してくるケースがほとんどだそうだ)大人が自ら命を断とうと故意に飲んだかだ。摂取量によっては命を落とす危険もある。「最も多い死因は胃腸管損傷、つまり胃や食道の火傷です」と博士は言う。「(漂白剤の摂取で)そうした部位が破れてしまい、死に至ることもあります」

とはいえ、理性のある人々ならトランプ大統領の医学的アドバイスに耳を傾けることはないだろう。だが、国が不安に包まれている時期に、世界で最も影響力のある立場の人間が、公に発信する場を根拠のない危険な医学的助言を支持するために利用したという事実は、深刻な問題だとチャイ博士は懸念している。

「医師として、また毒物学者として、人々がこうしたことを実行してしまうのではないかと心配しています」と博士は言い、大統領が推奨するもう一つの「コロナ治療薬」、ヒドロキシクロロキンによる合併症を起こした患者をすでに診察したと付け加えた。「(公衆衛生の観点で言えば)すでに我が国の医療体制は逼迫しています。出来ることなら、自らの意思で漂白剤を注入したり、消毒薬を飲んで合併症を起こした患者がこの後押し寄せて、その対応に追われるという事態は避けたいところです」

Translated by Akiko Kato

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