ONE OK ROCK初の配信ライブを考察、新曲「Wonder」で伝えたかった4人の信念

歌も音も何もかもが一瞬たりとも内側を向かなかった空間

たとえば直近作『EYE OF THE STORM』に至るまでONE OK ROCKが表現し続けてきたのは、ロックバンドとは従来のロックサウンドをアイデンティティにしている生命体ではなく、従来のものを食い破り続けることこそがロックバンドの矜持であるということだ。それが冒頭に記したONE OK ROCKの本質であり、同時に、ロックバンド本来のロマンとアイデンティティなのだ。線を守るためにロックがあるのではなく、線を超えるためにロックはある。価値観を守るためではなく、価値観をひっくり返すことにこそロックは宿る。そのことに誰よりも夢を見て、実際に国境すら超えていくアクションを起こしてきたのがONE OK ROCKであり、Takaが叫び続ける「生きてくれ」「前を向いてくれ」「一歩踏み出してくれ」という言葉はそのまま、彼らが体現し続けてきたことなのだ。

目の前に観客がいなくとも、歓声や歌声が跳ね返って来ずとも、ONE OK ROCKが放ち続けたメッセージは変わらない。だからこそ彼は執拗に「お前ら!」と叫び続けたのだ。これまでの配信ライブの数多くが「自分自身との対峙」から生まれるエモーションによって高揚や快感を生んできたのに対し、このライブでは歌も音も何もかもが一瞬たりとも内側を向かなかった。それこそが、空撮やスタジアム全体を覆ったLEDよりも凄まじかった。



Takaの孤独と内省とプライドを叫ぶ音楽としてポストハードコア〜スクリーモに共鳴していった初期があり、海外進出を果たした『35xxxv』(2015年)では音楽性・歌唱ともにより一層バリエーション豊かに変化。さらに『Ambitions』(2017年)では、ヒップホップ、R&Bソウルが席巻するポップミュージックを(歌唱の面でもサウンドプロダクションの面でも)真っ向から食らい、それをあくまでロックバンドのダイナミズムの中で響かせた。特に『Ambitions』は、当時の世界的なロックシーンを見ても、特筆すべきポップミュージックの消化を見せた大傑作だった。

さらに『Ambitions』を作り上げるタイミングで、ポップパンク側からR&Bやヒップホップを食ってスケールを広げていったフォール・アウト・ボーイの系譜にあるFueled By Ramenに移籍したことも、ロックバンドがポップミュージックの真ん中で勝つための、そして日本や世界といった線の一切を飛び越えて行くための道を本気で切り開こうとしてきたことの表れである。その上で放った『Eye of the Storm』は、EDMやトラップ、オルタナR&Bをより一層深く消化してビートとメロディを際立たせた作品だった。本作に先んじてリリースされていた「Change」の名の通り、作品ごとの変化とスケールアップを経て「ポップミュージックをロックバンドとして食う」というよりも「ポップミュージックのど真ん中に飛び込む」という抜本的な構造変化が多分に感じられたのが『Eye of the Storm』だったのである。

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