石崎ひゅーい、新曲で歌うのは"次に進むためのバッドエンド"

ー「Flowers」は〈僕らは路上に咲く花〉という歌詞から始まる曲ですが、これはどんなときに生まれたフレーズなんですか。

石崎:映像や台本以外でも、ヒントを探してはいたんです。自粛期間の家とスーパーマーケットの往来みたいな生活の中で、何かあるかなって考えていたときに、家のそばでコンクリートにひびが入っていてそこから花が咲いているのをたまたま見たんです。それを見つけたときに、「あ、できた」と思ったんです。自分が見たものをちゃんと作品に落とし込まないと、自分の曲にならない気がするので。その花を見て、ゴールが見えた気がしたんです。

ー石崎さんのこれまでの曲には、人間臭さがありつつも、温かみもあったり華やかだったりという印象を持ったのですが、今回こういうストイックな世界観に自分を追い込むのは大変だったのでは?

石崎:今、曲作りをするときに意識しているのが、膨らませるというよりはどちらかというとそぎ落とすことなんです。すごく明確にしていくというか、そういう感覚で曲作りを捉えていて。この作品のオファーをいただいたときに、最初からこういうストイックなものを作ろうとは決めてました。


2019年12月3日@赤坂BLITZ 撮影:鈴木友莉

ー「アンダードッグ」は、生きることへの執着みたいなものを感じさせる映画だと思うのですが、アーティストにも曲作りやライブステージへの執着ってあるんじゃないかと思うんです。石崎さんにもそういう執着ってあるんじゃないですか?

石崎:そうだなあ……。なんか、基本的に自分の中からポンポン曲が生まれてくるタイプでは、もうなくなっていて。

ーあ、以前と比べて?

石崎:そうですね。デビューしたての頃って、湧き水のように言葉が生まれてきたりしたんですけど、正直、そういう意味での勢いはなくなっていて。やっぱり、曲を作る前に心を動かす何かをしなくちゃいけなくて。そこからもう曲作りなんですけど。今は結構、1つ1つが難産ですね。

ーそうすると、「Flowers」もモチーフがあったにせよ、難産だったんですか。

石崎:最初の頃に比べたら、難産でしたね。そこはデビュー当初に比べたらだいぶ変わったと思います。

ーそこをちゃんと客観的に見て言えるってすごくないですか。まわりから言われる場合はあるかもしれないですけど。

石崎:いやあ~、まわりから言われてます(笑)。曲をポンポン生んで渡したりはしていないので、普通に「曲書いてよ」ってめっちゃ言われまくるっていう。「そうだよね~」ってはぐらかすんですけど(笑)。

ー(笑)。追い込まれてから曲がでてくるタイプ?

石崎:ああ、それはあります。性格的に、追い込まれたら奇跡的に良いものが出てくるということはあるんですけど。だからもう、奇跡を本当に期待するというか。でもそれは宝くじみたいなことなので(笑)。ずっとそういう風にはしていられないなと思って、何かを見つけないとな、と思って生活しています。

ー常に曲を作ってストックしておく、という人もいますよね。

石崎:僕は全然そういうタイプじゃないですね。昔はそうだったんですけど。

Rolling Stone Japan 編集部

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